2日目の11月9日午後には、九州を主な営業基盤とする地域金融グループ、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)の営業戦略部兼iBankマーケティング代表取締役である永吉健一氏が登壇。今年7月22日からサービスを始めた顧客起点の新たな取り組み「iBank」が生まれた背景や今後の展開などについて話した。

顧客起点のサービス「iBank」

ふくおかフィナンシャルグループ営業戦略部/iBankマーケティング代表取締役の永吉健一氏
ふくおかフィナンシャルグループ営業戦略部/iBankマーケティング代表取締役の永吉健一氏
 「金融業界では今、FinTech(フィンテック)という言葉が流行中」と永吉氏は言う。フィンテックとは、「Finance」と「Technology」を組み合わせた金融関連サービスを指す概念。永吉氏は続けて、「FinTech領域のサービスを提供する企業が続々と登場し、既存金融機関のサービスの代替が可能になっている。金融機関もFinTechに対抗する価値を提供していかないと、次の10年を生き残れない」と語る。実際、米国で登場しているFinTechサービスをFFG傘下の福岡銀行が提供するサービスに当てはめたところ、かなりのサービスが代替可能だったという。

 それだけではない。これからの時代を担う若い世代はデジタルネイティブで、価値観や求めるニーズもこれまでとは異なる。「中には銀行なんていらないと思っている人たちもいる」(永吉氏)。そんな危機感をいち早く抱いていたFFGでは3年前から、次の10年への挑戦として、今までの金融サービスの延長線上にないサービスを検討することに取り組んだ。それが「iBank」だった。

 iBankのサービスコンセプトは「つながるマネーサービス」。銀行ならではのデビットカード決済や毎月の収支管理、収支がプラスならワンタップで預金ができる「ちょこっと預金」という機能などを提供するほか、預金のきっかけづくりとなる旅行や車など日常のライフスタイル情報の配信、預金の目的や目標を掲げてゴールを可視化する目的預金、パートナー企業からのクーポン提供および送客などの機能を提供する。

 iBankのリリースで、預金の目的や購買額、購買時期などが見えるようになり、消費者のニーズやタイミングに一歩踏み込んだ新しいマーケティングの機会が創出できるようになったという。「iBankはニーズ喚起からその実現に向けた預金手段、決済手段を一気通貫で提供するプラットフォーム。これを活用して一人ひとりに最適なタイミングで、最適なメッセージを届けるマーケティングを実践していく。加えて、パートナー企業のマーケティングをデジタルシフトするサポートもしていきたい」と永吉氏は意気込む。

 さらに、永吉氏は最後にこう語り、セッションを締めた。「iBankという金融サービスプラットフォームを核に、地域の人と人、人と企業をつなぐ、新しいビジネスリレーションのあり方を提案していきたい」。

 続けて、エイチ・アイ・エス(H.I.S.)本社営業戦略室コーポレートコミュニケーショングループチームリーダーの丹下陽一郎氏が登壇した。

エイチ・アイ・エス本社営業戦略室コーポレー トコミュニケーショングループチームリーダーの丹下陽一郎氏
エイチ・アイ・エス本社営業戦略室コーポレー トコミュニケーショングループチームリーダーの丹下陽一郎氏

 H.I.S.ではこれまでほとんどのSNSにアカウントを持ち、旅行の話題づくり・きっかけづくりのため、日々、ユーザーとコミュニケーションを図ってきた。例えばFacebookでは国別・テーマ別に約80のアカウントを作成し、現地からの旬な情報を配信する「いいね海外旅行シリーズ」を展開してきた。

 だが、従来の取り組みではコンテンツを資産化できていない。そこで昨年末にオウンドメディア「Like the World」を開設した。しかしコンテンツの内容は同社自身が持つ素材。しかも反響のある素材は限られ、かつ同業他社も同様の写真をサイトに提示するため、差異化が難しい。「いずれ運用に行き詰まることが目に見えていた」と丹下氏は振り返る。

「旅行に行きたい」気持ちを高める

 そこでこれらの課題を解決するため、「Instagram」の活用を考えた。「主に女性が多いInstagramユーザーが投稿する、自分や友人がいかに風景などに溶け込んで楽しんでいるかにこだわって撮影した写真を、当社が活用できるようにInstagramアカウント『タビジョ』を作った」と丹下氏は言う。

 タビジョはハッシュタグ「#タビジョ」を付けて投稿した旅写真の中から、「これは」というステキな写真を選び、紹介するサービスだ。「毎回ステキな写真を投稿する人も増えてきた」と丹下氏。そういうユーザーと深くコミュニケーションを取るため記事作成も依頼したという。そして彼女たちが作成した記事を「Like the World」にアップしたところ、Facebookでのシェア数が平均数値よりかなり高くなったという。

 この結果を受け、H.I.S.ではこの手法をメインアカウント「@his_japan」にも横展開している。「#ハートのセカイ」「#ヤケイのセカイ」というテーマを企画して旅写真を募集し、そのまとめ記事をオウンドメディアで公開しているのだ。

 また、Facebookを中心としたSNSユーザーから投票を募り、その結果をランキング形式で発表する「旅トレンド調査」を実施。この結果もオウンドメディアやリリースにて発信しているという。「この取り組みでは、ニュースリリースしたランキングがどのようなPR効果を生み出せたかという数値的な目標を持てる。今年は昨年の倍以上の広告換算額の結果を出せている」と丹下氏。「ユーザーも、自分の写真が取り上げられることにモチベーションを持って取り組んでくれているので、私たちもやりがいがある。今後も、旅の思い出の場を提供していきたい」と展望を語った。

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