ニュースサイトには編集記事か広告記事か判然としない記事があふれている。広告に見えない広告記事を良しとする発想から脱却しなければ手痛いしっぺ返しを食らう。

“記事風の広告”を見抜く自信があると回答した人ほど、「広告」表示は必要と考えている。アンケートの詳細は関連記事「広告記事を見抜ける人ほど広告表記を強く希望」を参照

 ライスミルクをご存じだろうか。文字通りお米を原料とする植物性のミルクで、乳脂肪分やコレステロールが気になる健康志向の人の間で話題になっていた。牛乳、豆乳に次ぐ「第3のミルク」と呼ばれ、海外ではベジタリアンが愛飲しているという。昨年11月に「日経トレンディ」が発表した「2015年ヒット予想ランキング」でも、ライスミルクは第4位にランクインしていた。

 人気の兆しが見えたことで国内大手企業も参入してきた。キッコーマン飲料が5月1日に発売した「玄米でつくったライスミルク」がそれだ。同社が3月9日にプレスリリースを配信して以降、さまざまなメディアで記事が上がった。

編集記事? 広告記事?

 マイナビ運営のニュースサイト「マイナビニュース」が公開している「ライスミルク大特集」と題した広告企画ページもその一つ(下写真)。ページ下の方にしっかり「(マイナビニュース広告企画)」と明記されている。

キッコーマンが5月に発売した新商品「ライスミルク」の広告企画ページ。ページ下方に「(マイナビニュース広告企画)」の記述がある

 しかしながら、気になる点もある。「特集記事」として掲載されている記事タイトルをクリックして表示される記事は、マイナビニュースの通常のニュース記事の体裁で、広告記事であることを示す「広告」「PR」といった表記、および広告主名の記述がない。

 発売前日の4月30日に掲載された「これから流行る!? 新飲料『ライスミルク』ってなんだ?」は、同商品の企画開発担当者のインタビュー記事。その2週間後、5月14日掲載の「飲むだけじゃない! 料理にも使えるライスミルクとは」では、「牛乳代わりに飲むだけでなく、調味料としてお料理にもさまざまに活用できる」として、アレンジレシピを紹介している。

 ちなみにキッコーマンの広報にこれらの記事について尋ねたところ、タイアップ広告であるとの回答だった。一方のマイナビニュース側は、「ライスミルクに関する編集記事が数本集まったので、その入り口となる“まとめページ”を営業活動でご提案して、この形になっている」と説明する。

 今年の3月18日、日本インタラクティブ広告協会(JIAA、旧称:インターネット広告推進協議会)は「ネイティブ広告に関する推奨規定」を発表した。

 ニュース媒体やソーシャルメディアプラットフォームに溶け込む形で広告を表示する「ネイティブ広告」が隆盛の中、ネットユーザーの誤認を招かないように業界として自主規制に踏み切ったものだ。タイアップ広告については、「広告表記を行う」「広告主体者を明示する」ことを推奨している。

 したがって、記事を掲載しているマイナビの説明が正しいとすれば、広告企画からリンクしている特集記事は編集記事のため、「広告」表記は必要ない。

 ただ、編集記事を束ねて広告企画ページを作ることについては、いささか違和感を禁じえない。同一商品・ブランドの編集記事が複数集まれば広告営業に向かうのだとすれば、広告企画が後々成立しやすいような編集記事を書こうと、筆先が甘くなることはないだろうか。

 JIAAが公開したガイドラインは、ネイティブ広告の様々なパターンを網羅した完成度の高い内容だが、こうした課題まではさすがにカバーはしていない。そして広告主、ニュース媒体、広告・PR代理店の3者が結託すれば、ニュース記事を装った広告記事を「広告」表記抜きで掲載することも不可能ではない。

セミナー告知は編集記事?

 ほかにも読み手から見て、分かりにくいニュース記事がある。

 マイナビニュースの「ヘルスケア」ジャンルには「砂糖ラボ」というカテゴリーがあり、ここに収録されているスイーツや糖質関連の記事にアクセスすると、「スプーン印」で知られる三井製糖が運営する「スローカロリープロジェクト」のバナー広告が表示される。三井製糖がカテゴリースポンサーになって“バナージャック”している。

 このコーナーで、三井製糖の甘味料「パラチノース」が使われている商品をレポートする連載記事「パラチノース食べある記」が昨年暮れから不定期で6本掲載されている(6月14日時点)。記事は、各社の商品担当者がパラチノースを採用した理由や経緯を語ることを通じてパラチノースを“称賛”する内容だが、編集記事扱いである。

 一方、特定企業の顧客開拓を支援する役目を果たす記事も編集記事扱いになっている。

 2月25日掲載の「KDDI×ネクストジェン 特別座談会 - 『スマートフォン×ボイスクラウド』がビジネスを迅速化する」──。

 こちらは、オフィスにかかってきた外線からの電話や内線電話をスマホでやりとりできるPBX(構内交換機)ソリューションについて、タッグを組む2社がその意義を語る対談記事だが、記事末尾にはホワイトペーパーのダウンロード案内が付いている。資料ダウンロードを促すための、いわば“前振り”記事だ。

 5月22日掲載の「ITエンジニア不足の救世主 低価格かつ高品質なベトナムオフショア開発」。こちらは、ベトナムでのオフショア開発を支援する企業がこれまで手がけた事例を挙げながら解説する記事だが、記事末尾には6月26日に主催する自社セミナーの紹介と参加申し込みページへのリンクが張られている。こちらもセミナー参加を促す“前振り”記事と言えるだろう。

 そしてマイナビニュースの編集記事は、「Yahoo!ニュース」をはじめとするニュースポータル、ニュースアプリに配信される。ここまで挙げた記事はいずれもニュースポータルに転載されていた。

 マイナビニュースは、Yahoo!ニュースの「エンタメ」「IT・科学」「ライフ」の各カテゴリーにニュース記事を提供している。「ライブドアニュース」「エキサイトニュース」などの各ポータルも同様で、マイナビニュースから記事提供を受けていないポータルは探す方が難しいほど、ニュース供給源となっている。

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