オートバックスセブンは、マーケティングオートメーション(MA)ツールと統計解析ソフトなどを連係させてマーケティングプラットフォームを構築し、マーケティング施策の高度化を急いでいる。すでに既存顧客を対象に昨年実施したキャンペーンでは、システム導入前と比較して、キャンペーンを起点に店舗やEC(電子商取引)サイトでカー用品などを購入した人の割合を示すCVR(コンバージョン率)が55%高まるといった成果を上げている。

チャネルをまたいでシナリオを実行

 プラットフォームは2014年11月に完成した。MAツールとしては日本IBMの「IBM Campaign(旧Unica)」を、顧客分析などには統計解析ソフト「SPSS Statistics」を利用している。

チャネルをまたぐマーケティングシナリオを複数作成して、さまざまなキャンペーンを実行

 現在は、DM(ダイレクトメール)、電子メール、店舗、スマホアプリなどのチャネルをまたぐマーケティングシナリオを複数作成し、来店促進やLTV(顧客生涯価値)向上を狙ったキャンペーンを実行している。主に約860万人のアクティブユーザーがいる会員カード「オートバックスポイントアップカード」会員が対象となる。

 例えば店舗でカー用品を購入したことはあるが、タイヤ交換や車両点検といったピットサービスは利用がない人を抽出。ピットの利用でノベルティーグッズを進呈するといったキャンペーンを、まずDMで告知。キャンペーン終盤になっても来店がない人には、電子メールやプッシュ通知で再度訴求するといったものである。

 再案内をする際には、来店していない人の一部を対象に、タイトルや文面の一部を変えたメールやプッシュ通知を2種類送るA/Bテストを実施。効果を測定して反応が良かったタイトルや文面で残りの人に案内するなどの工夫をしている。「MAはシナリオの自動実行ツールというイメージが強いが、随時効果を測定し、結果に応じてシナリオを柔軟に変更できるメリットのほうが大きい」と、マーケティング部CRMグループ課長の福島将人氏は話す。

 すでに一定の成果は出ているが、同社は早くもシステム改良を計画している。MAのシナリオにおける打ち手の拡大だ。ディスプレイ広告と店舗のPOS(販売時点情報管理)システムとの連係を計画している。

 ディスプレイ広告が活用できれば、キャンペーンで商品を購入した人の属性やネット上の行動を分析し、ネットの行動などが近い人を抽出し、自社ECサイトへ誘導する広告を出稿するといった施策が実施できる。

 POS連係が実現すると、ポイントカード会員が店頭でカードを提示し、POSで読み込んだ際に、キャンペーン対象商品をまだ購入していない場合は、画面にその旨を表示を出し、店員が声がけすることが可能になる。クロスチャネル型の打ち手の幅が大きく広がるため、CVRなどの一層の向上につながるだろうと同社は考えている。

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