王子ネピアは消臭機能付きのトイレットペーパー「ネピア におわん」と「ネピア におわにゃん」のプロモーションの一環として、グーグルの地図サービス「Google マップ」と連動して、広告上で自社商品の取扱店舗を案内するディスプレイ広告の配信を6月1日から始めた。商品に関心を持った消費者をメーカーが流通店舗へ誘導する、“メーカーO2O広告”とでも呼ぶべき取り組みだ。2週間の配信後、POS(販売時点情報管理)システムのデータと突き合わせて分析する。ネット広告と売り上げの相関性の分析は、同社として初めての取り組みとなる。
王子ネピアが広告から直接店舗を案内する取り組みを始めたのは、同社の主力商品であるトイレットペーパーやティッシュペーパーの商品特性上、取引先となる流通店舗で十分な棚を確保しにくいという課題を抱えていたからだ。
「トイレットペーパーやティッシュペーパーは、商品のサイズが大きい半面、それほど売り上げが取れるカテゴリーではない。そのため、流通企業もそれほど大きく棚を割けない。ブランド力のある製品でも、せいぜい全取引先店舗のうち、カバー率は3割にとどまる」(マーケティング本部商品企画部の齋藤敬志主幹)。
こうした理由から、ある商品のプロモーションを強化して商品認知を高めたとしても、消費者が訪れた店舗では、その商品を販売していないことも少なくない。かといって、その場でほかの商品を購入せずに、わざわざその商品が販売されている店舗を探してまで購入する人は多くはないだろう。「購買までの導線上に商品がなければ、広告が無駄打ちになってしまう」(齋藤氏)。いかにして、その商品の取扱店舗に誘導するか。それが王子ネピアにとって課題となっていた。
取扱店のある都道府県に絞って配信
そこで目を付けたのが、地図連動型のディスプレイ広告だ。王子ネピアが活用したのは、ディスプレイ広告上にマウスのカーソルを合わせると、広告表示枠が広がり、地図が表示されるリッチメディア広告だ。王子ネピアは、この広告を25~54歳の女性をターゲットに、取扱店舗のある都道府県に絞って広告を配信した。

消費者がアクセスしている地域に合わせて、広告に表示された地図上に、周辺10キロメートル以内にある、取扱店舗の情報が表示される。4月に新発売したにおわんとにおわにゃんの広告を出稿することで、商品認知を高め、同時に取扱店舗も案内して店舗に誘導する試みだ。「におわんとにおわにゃんは、流通企業からの反応もよく、比較的多くの店舗で取り扱ってもらえる手応えがあった。そのため、より多くの人に店舗への誘導を促せると考え、出稿を決めた」と齋藤氏は言う。
本施策では、これまでとは異なる新たな効果測定・分析にも取り組む。従来はクリック率(CTR)などでネット広告の効果を測定してきたが、購買にどこまで影響したかは分からなかった。今回は広告配信期間にPOSデータに変化が見られたかどうかを分析するほか、広告施策の前後のネットアンケート調査でブランド認知の向上に効果が見られたどうかを分析して効果を測定する。
さらに、「ネット広告活用の第2弾として、動画広告も準備中だ」(齋藤氏)。新たな指標の下、効果測定をしながら、ネット広告の活用を一層推進していく方針だ。