ハイクラスの人材に特化した求人情報サイト運営のビズリーチ(東京都渋谷区)は年内にも、プライベートDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を構築して、マーケティングオートメーション(MA)ツールと連携させる。会員獲得から転職までの情報を一元管理して、会員のステータスに合わせて最適な情報を提供して、獲得からリードナーチャリングまでを一貫して実現できるプラットフォームの構築を目指す。
また、リードナーチャリングの過程において、会員にとって必要なコンテンツを用意するために、昨年、編集室を設置。昨年から採用を進め、現在は6人が所属する。「DMPとの連携で、広告クリエイティブはターゲットごとに最適化ができるようになった。同様に、ナーチャリングでも段階ごとに必要なコンテンツを用意すべき」(マーケティング本部の青山弘幸マネージャー)という考えから編集専門の組織を設置した。マーケティングプラットフォームの構築に先駆けてコンテンツの拡充を狙う。

ビズリーチがこのようなプラットフォームの構築を決めた理由の1つに、昨年「Yahoo! DMP」を活用して一定の成果につながった実績がある。人材業界はSEM(検索エンジンマーケティング)やディスプレイ広告などで、会員獲得を目指して、熾烈な競争が続いている。「今後、競争がさらに激化することはあったとしても、ゆるやかになることは考えられない」(青山氏)。こうした状況ゆえに、ビズリーチはFacebookやLinkedInといった、新たな媒体が登場すると、他社の活用に先駆けて広告を出稿することで、先行者利益を得ることを目指してきた。
しかし、ビズリーチが求めるような、ハイクラスの人材に絞って、広告を配信するようなことは、現状の広告サービスでは難しい。より効率的な広告配信を実現するために目を付けたのが、自社で持つデータの活用だ。「過去の採用実績などから、企業からニーズの高い優秀な人材のデータが自社にある。Yahoo! DMPを活用すれば、このデータにヤフーのデータを掛けあわせて、より効率的な会員獲得ができると考えた」(青山氏)。
スカウトメールの受信数は2.4倍
Yahoo! DMPを活用する上で、まず取り込むべきセグメントを作った。会員が企業から受け取ったスカウトメールの通数をベースに年齢や業種を掛けあわせて、ビズリーチが設定する優良会員のセグメントとして、Yahoo! DMPに取り込んだ。このデータにヤフーの持つ、アクセスデータや検索キーワードといったデータを掛けあわせた。
この掛けあわせたデータを基に、既存顧客を除いて、ヤフー上で近しい行動をとっている人に対して約1カ月半、広告を配信した。KPI(重要業績評価指標)には、広告施策で獲得した会員が受け取るスカウトメールの受信率と受信数を設定した。
広告効果については、ヤフーが提供するサービスの利用履歴などによる興味関心でターゲティングして広告を配信するサービス「インタレストマッチ」で獲得した会員と比較した。その結果、自社のデータを活用して獲得した会員は、スカウトメールの受信率が1.4倍、1人当たりのスカウトメール受信数は2.4倍高い結果となった。
ただ、新たな課題も浮上した。「(ターゲットを絞るため)単純なCPA(顧客獲得単価)だけで見てしまえば、既存の手法の方が安い」(青山氏)。そこでCPAだけにとらわれず、Yahoo! DMPを活用して獲得した顧客のLTV(顧客生涯価値)を分析して、総合的に判断する。
課題は持ち上がったものの、データを活用することの手応えにはつながった。ビズリーチはこの経験を生かし、広告配信だけではなく、リードナーチャリングも含めてデータに基づくマーケティング施策の実施を目指す。