リコーが全世界的にマーケティングオートメーション(MA)ツールの活用に本腰を入れ始めている。リコーが主導する形で、国ごとのニーズや市場環境に合わせて、各国の販売会社にMAツールの導入を順次進めている。
国内においては、リコージャパンが昨年から試験的に導入して、3Dプリンターの営業活動に活用し始めた。国内における既存事業は、これまで培ってきた営業力でカバーできている。一方、3Dプリンターは営業先が製造業や工場などになり、一から顧客を開拓する必要に迫られた。
とはいえ、新規事業に大きなリソースを割くことは難しい。そこで「ネットで新規顧客を開拓して、MAツールで育成することを目指すことにした」(ビジネスソリューションズ事業本部画像システム事業センターの後藤和久所長)。

リコージャパンは、3Dプリンターの専用サイトを作り、そのサイトで3Dプリンターを活用するためのノウハウや、3Dプリンターに関する用語集をコンテンツとして掲載。ネット広告や検索サイトなどから集客し、資料ダウンロードサービスなどに誘導して見込み客リストを集めている。
この見込み客へのアプローチに、MAツールを活用している。例えば、3Dプリンターのモニターキャンペーンを実施して、見込み客にメールで告知する。その後、誘導先のコンテンツの閲覧や申し込みの有無から、関心を持ったにもかかわらず、申し込みをしていない人にだけ絞って、再度メールを送り告知をする、といった方法で活用するなどしている。こうして試験導入の期間中に知見を蓄積した。リコーが活用するのは、日本オラクルのMAツール「Oracle Marketing Cloud」だ。
申し込み内容で案件化率に大きな差
2016年3月期からは事業目標に対して、MAツールで獲得すべき見込み客数をKPI(重要業績評価指標)に据えるなど、活用を本格化させた。3Dプリンターのサイトでは、資料ダウンロード、3Dプリンターの導入コンサルティングの依頼、見積もり依頼など、申し込みのポイントが複数ある。申し込み内容で製品への関心度に差があり、案件への転換率も異なる。例えば、見積もり依頼なら、既に具体的に導入が視野に入っていると考えられよう。転換率は高い場合で5割、低い場合で1割程度だという。
そこで、各申し込みから商談に至る確率を割り出し、それぞれ何件の申し込みがあると、事業目標に対してどれほど売り上げ貢献につながるかを算出する。その目標を達成できるように、新規獲得のためのキャンペーンや見込み客へのメールでのアプローチといった施策に落とし込んでいくことを目指す。
さらに、Oracle Marketing Cloudの管理画面を営業部門とも共有。案件化が期待できる見込み客のリストを渡した後に、その見込み客が、申し込みに先駆けてどんなコンテンツを閲覧したかといった、事前の行動を把握できるようにするなど、営業活動の支援もし始めた。
「まずは3Dプリンターについて、(案件化につながる)確度の高い見込み客リストをもらえるという手応えを、(営業部門に)感じてもらう。そうした成功体験を積み重ねていく」(後藤氏)。そうして、本丸である複写機の営業支援などにもMAツールの活用を広げていくことを目指す。