大手住宅メーカーの大和ハウス工業はこの1年、ウェブマガジン「TRY家コラム」を核にしたコンテンツマーケティングに注力している。このゴールデンウイーク(GW)には、そのメルマガ会員や資料請求者を対象に、一人ひとりにパーソナライズした動画メールを配信し、住宅展示場への来場を促進。個別の名前の呼びかけが大きな成果を上げた。

 TRY家コラムは、住宅建築のニーズが顕在化していない潜在層に向けたウェブマガジンだ。ペットと暮らす家づくりや、収納、費用、設備など住宅にまつわる様々な疑問に答える記事を掲載している。メールマガジンを毎月1~2回の頻度で配信しているが、住宅の購買につながる決定打にはなかなか成り得ていなかった。

表札に名前、ナレーションで呼びかけ

 そこで着目したのが、パーソナライズ動画メールだった。リアルなアピールの場である住宅展示場への来場を促すことを目的とし、来場者を最も増やしたいGW直前の4月28日午後7時30分に、TRY家コラムのメルマガ会員と、住宅の資料請求をした見込み客に対してメールを配信した。

60秒の動画のうち、56秒まで再生した人は80.3%、2回以上見た人は19.3%に上った

 動画コンテンツは、モデルハウスの表札にメールを受け取る個人名を当てはめ、音声でメールの受取人の名字を呼びかけて、家づくりの進捗を尋ね、最寄りの展示場を案内するストーリーだ。全60秒の動画で、ナレーションは音声合成でつけている。展示場で撮影した映像に、システム開発のlivepass(東京都港区)のサービスを活用して、配信者別の動画を自動的に作り分けた。

 その成果で注目できるのが、動画の再生完了率だ。視聴者の80.3%が動画が終わり、展示場の案内が表示される56秒まで見ていた。動画の再生完了率は8割と言えよう。同社総合宣伝部東京センター事業販促企画室室長の大島茂氏は、「(モデルルームを写しただけで映像自体の)インパクトがさほど大きいわけではないが、8割がほぼ最後まで見たというのは驚異的だ」と評する。

 そのほかの指標も大きく伸びた。過去に配信したメールマガジンと比べて、開封率は2倍となった。メールの件名に、「【大和ハウス】○○様だけの動画を配信!ぜひご覧ください」と、名前を入れて自分にパーソナライズされた動画が視聴できる内容だと一目で分かるようにしたことが効果を発揮した。さらに、メールマガジンのコンテンツで誘導した展示場サイトへの誘導数は2倍に増加し、住宅展示場ページへのGW中のアクセス数は3割増加した。

 動画メール配信者とGW中の展示場来場者のデータを突き合わせて、来場者1人を獲得するコストも試算した。突き合わせは途中段階ながら、既に他の手法と比べて費用対効果は十分に見合う結果となった。今後、本格的な動画制作やパーソナライズに踏み込んだ場合の費用増加は課題になりそうだ。

 総合宣伝部東京センター事業販促企画室主任の小林高英氏は、「資料請求などで接点が持てる年間10万人規模の見込み客を、2年後、5年後に向けて、ワン・トゥ・ワン マーケティングによって適切にフォローし、営業に顧客を還元する仕組みにしていきたい」と語り、動画メール配信も含めて、見込み客個別への対応を強化していきたい考えだ。