依然として圧倒的なリーチを持つテレビCMと、ターゲティングという強みを持ち近年利用が広がるネット動画。ともにブランディング目的で活用されるが、ROI(投下資本利益率)をどう評価、比較するか。この課題に対して、独自の方法で異なるメディア同士のROI比較の試みを始めたのがコニカミノルタだ。
同社は昨年12月から今年1月にかけて、「イノベーション」をテーマにした2種類のキャンペーン動画を用意し、リーチ率の高いテレビを中心に、ネット動画広告と首都圏のJR路線の車内で映像を流す「トレインチャンネル」で展開した。日本国内でのブランド認知とイメージ向上が目的だ。ネット配信には、Facebookと動画DSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)を活用した。
そして、効果を把握するために、同社のターゲット層であるビジネスパーソンにアンケートを実施。各メディアの広告の接触状況や動画視聴後の態度変容について調査をした。
重複接触で効果は高まる
調査項目の核となるのが、コニカミノルタへのイメージ項目だ。多数の項目を尋ね、その中から同社の企業理念に関わる項目が、キャンペーン動画接触者と非接触者で異なるかを分析。そこからブランドイメージに対する態度変容(リフトアップ)を判断した。各メディアの推定接触者数と態度変容した比率から人数を算出し、1人につき1ポイントとして計算し、対象イメージ項目のポイントを合計。投下金額を合計ポイントで割ってメディアごとのROIを求めた。

ROIを比較して明らかになったのは「『テレビと動画』または『テレビと電車』のように2つのメディアと重複接触した場合は、単一接触と比べて倍近くROIが高い」(CSR・広報・ブランド推進部の中村俊之氏)という結果だった。
ROIが最も高くなったのはネットとテレビの重複接触者だ。テレビ単体と比べて半分近いコストで済んだ計算だ。3つのメディアを本格的に使った施策は同社にとって初めてだが、調査を実施して、テレビの「広さ」とネットの「深さ」という特長を再確認できたことは大きな収穫となった。
「仮でも、評価方法を確立できたことに意味がある。これを基準に次の目標値を設定できる。クリエイティブや配信方法によっても変わるが、データを積み重ねて精度を上げていくことが重要」(CSR・広報・ブランド推進部ブランド推進グループリーダーの武田冬彦部長)だと言う。
同時に、厳密に効果測定するには他にも考慮すべき要素があることも認識している。今回は、2種類の動画をひとまとめに調査したが、クリエイティブが態度変容に及ぼす効果を考慮して、施策別の比較も必要だ。
また、3つのメディアで同じ動画を展開したことで、改めて「モバイルを意識するとネット動画の再生時間は再考した方がよい」「スマホの画面だと色が暗めに表示されてしまう」「字幕はスマホの画面サイズを想定して大き目に」などの改善点や気づきも得られたという。