
玩具やベビー用品を取り扱う日本トイザらス(川崎市)がオムニチャネル戦略を加速して売り上げを伸ばしている。昨年7月に自社EC(電子商取引)サイトをリニューアルするとともに、実店舗で取り扱いがなかったり欠品だったりしたアイテムを実店舗からオンライン注文できる「ストア・オーダー・システム」を開始。同社執行役員eコマース本部長の飯田健作氏は、「オンラインと実店舗の双方で顧客にとってシームレスな買い物環境を整えることができた」と成長の要因を語る。
同社のEC部門は2000年に米国本社と日本法人、ソフトバンク・イーコマースなどが出資して設立。2006年に日本トイザらスが吸収合併したが、当初実店舗とは一線を画した体制で営業してきたため、例えばキャンペーンを実施していてもECは対象外だったりと、近年まで別部門という意識があったという。それでもこの2~3年で、実店舗とEC間の行き来をしやすくして、活性化すると、相乗効果で全社の売り上げを伸ばすことになるとの考えが浸透し、オムニチャネルに舵を切り始めた。
YouTubeで説明動画も強化
改善のポイントは大きく4つ。
1つ目はECの取り扱いアイテム数の増強。従来は売れ筋に絞った展開やEC専用商品を重視していたが、顧客にとってシームレスな買い物環境を整えるためには、店頭で実物を見て後で買おうと思った商品がECにないのは致命的になる。昨年、段階的に5000アイテム超を増強し、平均的な店舗と遜色ない規模にまで増やした。今後も随時追加していく。
2つ目は、実店舗とEC間で商品の融通をきかせること。2012年にEC購入商品を希望の実店舗店頭で受け取れる「イン・ストア・ピックアップ」、2013年にEC専用倉庫で品切れになっている商品を近隣の実店舗から迅速に配送する「シップ・フロム・ストア」を稼動させた。昨年開始した実店舗からのストア・オーダー・システムは、まず42店舗で試験的にスタートし、現在は全国約160店舗のうち100店舗超に専用コーナーを設置している。
3つ目は、実店舗とECの世界観の統一。顧客がEC来訪の際、違和感なく店舗との一体感を感じられるよう、デザインやカラー選定、使用フォントなど実店舗と差異があった部分を細部までこだわって統一した。
4つ目は、ECにおけるYouTube活用。2013年春に公式YouTubeチャンネルを開設し、昨夏時点では200本ほどだったが、現在は500本を超えるペースで動画配信を強化している。育児の片手間にスマートフォンで膨大な説明書きを読むのは厳しいが、動画ならば商品写真だけでは分かりにくい使い方や設置方法なども伝えることができる。
オムニチャネル化の効果はてきめんだった。2014年度のECサイト訪問者数は前年比50.3%増、ページビューは同38.8%増、そしてオーダー数は同51.1%増と、劇的に売り上げを伸ばした。飯田本部長は、「これは決して実店舗の売り上げを奪ったわけではなく、ほとんど純増といっていい数字。アナ雪&妖怪特需もあったが、その分を差し引いても大きな伸びだった」と語る。
今後も、実店舗の楽しさ、にぎやかさをEC上でも使い勝手を損なわない範囲で再現するなど、一体化を強化していく考えだ。