求人情報サービスのエン・ジャパンがコンテンツマーケティングを強化している。目的別に運営する複数サイトは従来、すべて内製していたが、この4月からは外部ライターにも原稿を発注するなどして、コンテンツ拡充のスピードを加速させる。記事の充実で、転職需要の一層の喚起やブランディングを狙う。

 エン・ジャパンがコンテンツマーケティングに取り組むのは、ビジネスパーソンと幅広くタッチポイントを作るのが狙いだ。これまでの広告出稿にも、新規顧客を獲得する狙いがあったが、転職を検討していない“潜在層”にはなかなか響きづらいという課題を抱えていた。

 とくに「Web・IT業界は求人の需要に対して、(スキルを持つ)人材が少ない。そのため、まだ転職を考えていない層と継続的にタッチポイントを作り、ブランドを刷り込む方法を探していた」(デジタルプロダクト開発本部コンテンツ制作チームCAREER HACKチーフエディターの松尾彰大氏)。

Web・IT業界で働く人向けのメディア「CAREER HACK」

 そこで目をつけたのがコンテンツマーケティングだ。Web・IT業界は歴史が浅く、キャリアパスが確立していない。そのため、今すぐに転職は考えていなくても、今後を見据えるための参考材料を探している人は多い。ならば様々なキャリアパスを歩む人をインタビュー記事で紹介することで、潜在層も含め、今後のキャリアを考える人たちと広く浅くつながりが作れるのではないか。そんな考えから、生まれたのがWeb・IT業界で働く人向けのメディア「CAREER HACK」だ。

 アプリの開発者や人事担当者に聞くエンジニアの評価制度から、勢いのあるベンチャー企業の社長インタビューなど様々な記事を掲載。こうして関心を持ってもらい、主にソーシャルメディアで話題にすることを狙う。

「辞典」サイトは月間100万PV

 CAREER HACKは、転職サイトのマーケティングファネルにおける上流で顧客接点を作るのを目的としている。対して、転職にまつわる様々な用語を解説するサイト「転職大辞典」は、転職を具体的に考える層が対象で、ファネルの下流に位置付けられる施策だ。昨年6月に開設したばかりだが、ほぼ自然流入だけで月間PV(ページビュー)は既に100万に達している。

 「検索エンジンマーケティングにおいて、(転職情報の)本体サイトでは取り組んでいない、スモールワードでの集客が狙いだ」とデジタルプロダクト開発本部コンテンツ制作チーム田中嘉人氏は説明する。

 一言で言えばノウハウ集であり、転職活動で検索しそうなキーワードの回答となるコンテンツを用意して集客し、エン・ジャパンのサービスへ誘導する。また、広告宣伝部門と連携して、サイト訪問者にリターゲティング広告を配信するなど、より獲得志向が強い。「サービスへの集客面で、一定の成果が表れ始めている」(田中氏)。

 4月からはさらにコンテンツ拡充のスピードを速める。4月末時点で300本だった記事を6月末までに1000本まで増やす。そうして一層の効果向上を狙う。