消費者参加型の製品開発、いわゆる「共創」が注目を集める。5月号の特集でも取り上げたが、これはどの業種・業態でも取り組めるとは限らない。ペットフードがその一つ。そもそも人が食べるものではないため注文を付けることが難しく、またペットの健康を考慮した動物栄養学の素養が不可欠なため、愛犬家といえどもその開発陣に加わるのは無理がある。

 では消費者との協働による新たな価値創造はあきらめるしかないのかといえば、決してそうではない。フランスのペットフードブランド「ロイヤルカナン」の輸入販売を手がけるロイヤルカナンジャポン(東京都港区)は、ペット愛好家をセミナーや展示会に招いて、自社製品への信頼度を高め、新規顧客の開拓にも結びつけている。

 同社の製品は、犬種別・サイズ別・成長ステージ別に細分化、最適化したプレミアムフードで、ペットショップや動物病院など専門店ルートで販売している。食欲旺盛だったり避妊・去勢で太りやすかったりする小型犬向けといった具合に、症状や悩みに応じた専用製品もあって製品ラインアップは豊富だ。そのためペットオーナーの悩みに応じた製品提案ができるよう、ペットショップ販売員向けのレクチャーに重点を置いてきた。

 その上で、ペットオーナーからも指名買いされるブランドを目指して、2012年からブロガーイベントを開催。ペットの食事と健康について啓蒙するセミナーを実施したところ、熱心なペットオーナーから好感触を得て、その情報はブログを介して愛好家仲間に広まった。そんな発信力、影響力のあるオーナーと定期的に交流を持てるよう、昨年3月、アンバサダーの募集を開始した。アジャイルメディア・ネットワーク提供のプログラムを活用している。

一日スタッフ体験で愛着度向上

アンバサダーを募集し自社ブランド推奨意向を高めたロイヤルカナン

 同社のアンバサダー向けイベントは、一方的な座学で終わらないようにしている点が特徴だ。獣医師による食事と健康講座を中心に据えながら、愛犬・愛猫が輝く一瞬を逃さない撮影テクニック講座なども用意し、アンバサダーの発信意欲を高めている。昨年7月に東京ビッグサイトで開催されたペット関連業界の展示会「インターペット」では、「犬猫の健康知識が習得できるeラーニング教材をブース来場客に紹介するスタッフを10人募集し、業務体験に従事していただいた」(同社e-business&CRMマネージャーの柴田規成氏)。ペットフードの開発には携われなくても、こうした取り組みを通じて同社とアンバサダーの一体感、親近感の醸成に努めている。

 業務体験をした10人が同社への愛着が高まるのはある意味当然だが、会合に未参加のアンバサダーも、活動報告を定期的に送信し閲覧してもらうことで着々とブランドロイヤルティーは向上している。開設しているブログやSNSで同社ブランドに言及する回数がアンバサダー登録前より増加し、またブランド推奨意向を尋ねるNPS(ネットプロモータースコア)調査では、登録時の調査よりスコアがアップしていることが確認できた。

 新製品リリースの際にはアンバサダーからモニターを募り、当選したことを明記の上、感想をブログに投稿してもらう。また、記事の一部を広告原稿に採用してキャンペーンサイトに誘導することで、潜在顧客が来訪する好循環を作り上げた。「キャンペーンサイトのPVはアンバサダー開始前と比べて倍増の勢い」(柴田氏)。今春発売の新製品も出足は好調だという。

 消費者の参加でマーケティング効果を高める手法は、共創による製品開発だけではない。ニーズのある情報を提供し、共に活動することで、ファンは自社の貴重な戦力になる。