体重と体脂肪、6項目の体調情報を毎日記録するだけで、自分の健康状態に応じた記事コンテンツや広告コンテンツが配信される──。リクルートホールディングスの実証研究機関であるメディアテクノロジーラボは3月、同社の健康管理アプリ「RecStyle」をリニューアルし、新たな広告配信を開始した。同社のヘルスケア事業の一環で、「コンテンツ配信の実験的な取り組み」(同社)という位置づけだが、ユーザーの体調に応じたネイティブ広告が訴求できる「体調連動型広告」として、注目が集まりそうだ。
2012年10月にリリースされたRecStyleは、累計ダウンロード数が170万。現在の月間アクティブユーザー数は40万4000人で、その約6割が女性だ。
記録するのは、体重と体脂肪のほか、「食べ過ぎ」「アルコール」「運動」「生理」「お通じ」「体調不良」といった、その日の体調である。これらのデータを基に、ユーザーに最適な記事コンテンツと広告コンテンツを、1日1回配信する。例えば、食べ過ぎ/飲み過ぎ(アルコール)が続いている時期には、体調チェックのハウツー記事や、体調を整える食品の広告を配信したり、最初に設定した目標体重(体脂肪率)よりも増加傾向にある場合には、ダイエットレシピの記事や広告を配信したりするといった具合だ。
RecStyleの狙いは、病気の予防的対応と、そのための情報提供である。メディアテクノロジーラボの古田周平氏は同アプリについて、「今までデジタル化が難しかった体調情報を、継続的にデータ化できる。ユーザーの毎日の体調を、ほぼリアルタイムに把握し、情報を適切なタイミングで配信できることが特長」だと語る。
かねてから、ヘルスケア情報に対するユーザー側のニーズと、情報を発信したい企業側のニーズは存在した。RecStyleのマッチングのアルゴリズムは、検証を繰り返している段階だが、すでにリリースから2年以上経っており、「ある程度のデータは蓄積されているので、“出し分け”は可能」(古田氏)だと言う。
将来的には、例えば、体重を増やしたい人たちに対しても、筋肉を増やしたいのか、栄養バランスのよい食事をしたいのかを判別し、コンテンツの出し分けをできるようにする。記事コンテンツと広告コンテンツには、体調に関する細かいメタデータを付与し、アプリ側でコンテンツを取りに行く仕組みを採る。ユーザーの体調に関するデータは、センシティブな内容も含むので、サーバー側には保存しないとのことだ。
広告コンテンツのクオリティで勝負
RecStyleが他の健康アプリとの差別化として打ち出しているのが、配信する記事および広告コンテンツのクオリティだ。ヘルスケアに関する情報は、商品を提供するメーカー主導で編集されており、その内容や効果は科学的な根拠が乏しいものが多い。RecStyleでは、広告の内容を精査し、「世界標準の科学と裏付けのあるデータに基づいた効果を謳っているかを判断し、広告出稿を選別する」(古田氏)と言う。広告を独自の基準でフィルタリングすることで、出稿主もブランドイメージが保てるという狙いがある。
例えば、スキンケア関連の広告コンテンツの場合、冒頭に広告コンテンツであることを明記し、前半部分には紫外線による肌への影響といった一般的な情報を掲載する。そして、後半に商品紹介と最後に商品HPへのリンクを張るといった体裁を採る。
RecStyleの課題は、ユーザーの継続率の維持だ。その施策として、実験的な取り組みも行ってきた。例えば、ダイエットで目標体重に達成したら、グループの下着通販サイト「ERUCA」で利用できるクーポンを出すといった、アチーブメント広告を実施した。また、現在は、1週間や10日連続で入力すると、アプリ背景のカラー(スキン)を1色ずつプレゼントしている。「予防的対応は、ユーザーの生活に溶け込むこと。そのためには、“遊び心”があり、楽しく、ライトに、かっこよく続けられる施策を考えた」(古田氏)とのことだ。
精度の高いマッチングの循環が回るためには、記事コンテンツ、広告コンテンツ、そしてユーザーデータの3つが、ある程度のボリュームで揃っている必要がある。古田氏は、「コンテンツ配信は1日1回なので、必ず読んでもらえるような質の高いコンテンツを製作するよう心がける。当面の目標は、記事コンテンツを100本ストックすること」と語る。