天気が良ければ洗濯物は外に干すのが一番。そんな考え方は今も根強いが、春先に飛ぶスギ花粉やPM2.5などの付着を嫌い、晴れの日でも部屋干しを選ぶ人が増えている。そんな単純な属性では捉えきれない層に訴求するにはどうすればよいか──。P&Gジャパンは、増加している部屋干し派の主婦をターゲットにしたユニークな施策を展開中だ。
日本気象協会と共同開発した「部屋干し指数」である。これは洗濯物を部屋干しした際に生じる特有のニオイを、洗濯と同時に消臭できることを売りにして、3月上旬に発売した洗剤「アリエール リビングドライジェルボール」の認知を高めることを狙った施策だ。
全国13都市の指数を毎日発表
部屋干し指数は、日本気象協会が持つ天気、風速、花粉とPM2.5の飛散量という4つの予測データを分析。当日から6日先までの各日が、部屋干しにどれほど適しているかを5段階で評価し、アイコンで表示するもの。同協会のWebサイト「tenki.jp」で全国の主要13都市の指数を毎日発表している。
P&Gが、こうした施策を考えついたのは、他社も発売する似たコンセプトの商品との差別化を図るためだ。ブランドマネジャーを中心に具体策を議論する中で、日本気象協会と提携し、部屋干しに適した日がいつなのかを知らせる「指数」を作るというアイデアが出てきた。もともとtenki.jpは、気象情報を一般の人にも分かりやすく伝える工夫が豊富なことで知られ、そのPV(ページビュー)は1年間で約15億。部屋干しの以前にも洗車指数など数多くの指数を制定している実績もあった。
日々の指数は協会側で決定しているが、開発段階ではP&Gからもデータを提供した。奈良県・大和高田市立病院のアレルギー専門医である清益功浩医師と共同で実施した洗濯物への花粉付着量の実験データである。「当社は衣類への付着データなどを持っていなかった。花粉の影響度合いを評価するのに役立った」と、日本気象協会事業本部メディア・コンシューマ事業部コンシューマ事業化コンテンツグループ技師の谷口聡一氏は話す。
では、この部屋干し指数はどれほど見られているのか。全部で17ある指数のページのPVで見ると、部屋干しは2月に追加した新顔ながら「常時トップ5に入る人気コンテンツになっている」(日本気象協会事業本部メディア・コンシューマ事業部コンシューマ事業課広告グループの古賀江美子氏)。
P&Gは部屋干し指数のページにアリエールの広告を出稿。そこからブランドサイトへ誘導している。「新商品の販売数量、金額はともに事前の想定を上回っている」(P&G広報渉外本部)といい、3月から出稿しているテレビCMには及ばないが、部屋干しに興味関心の高い層にリーチできており、売り上げにも貢献していると評価する。
協会との契約で指数の公開は5月で終了するが、本施策で得た知見を生かし、新たな定番商品に育てていきたい考えだ。