緑茶飲料「お~いお茶 緑茶」で知られる伊藤園。現在は花見のシーズンに向けて、色鮮やかなピンクの桜をあしらったデザインの「お~いお茶」期間限定パッケージを1月下旬から展開しており、販売は好調だという。

 実はこの売れ行きには、同社が桜パッケージの発売に合わせて実施した2つの消費者参加型のデジタル施策が効いている。デジタル施策を一気に2つ、ほぼ同時に打ち出すのは、実は同社にとって初の試みである。そして2つの施策はともに、事前に想定していた参加数を超える成果につながっている。

 「これまではテレビCMと雑誌広告というマス型マーケティングを展開してきた」(マーケティング本部広告宣伝部の大樂泰督氏)という同社。デジタルに挑戦し、良い結果が出たことから自信を深めつつある。

老舗ブランドゆえの課題

 伊藤園は30年前の1985年に緑茶飲料「缶入り煎茶」を発売したこの分野の老舗企業である。その歴史の長さもあって主力製品「お~いお茶」のブランド認知は「いつ調査をしても、ほぼ100%。昨年の茶系飲料市場における販売数シェアは約35%で、トップブランド」(広報部広報室の大和晃祐氏)だという。そんな伊藤園がここに来て、マーケティングのデジタル化に力を入れるのには2つの背景がある。

 1つは、その高いブランド認知ゆえにクリエイティブに工夫を凝らしたお~いお茶の新作テレビCMを高いGRP(延べ視聴率)で出稿しても、消費者を動かすことにつながりにくいということである。2つ目は、購買顧客の高齢化が進行していることだ。

 30年前に缶入り煎茶を発売してから数年はライバル企業が存在しなかったため、当時獲得した顧客は今も同社の熱心なリピーターになっている。だがその後、他社から競合商品が出てくると、同社商品は相対化され、今では40~60代の年齢が高い消費者が支持するブランドになってしまった。マーケティングのデジタル化は、こうした課題の解決を目指したものである。

「とっておきの“春”」キャンペーンページ

 そうした狙いを持って2月2日に始めた「とっておきの“春”」キャンペーンは、春を感じさせる写真をスマートフォンなどで撮影し、「#おーいお茶_桜」という商品名のハッシュタグ付きでInstagramなどのソーシャルメディアに投稿してもらう企画だ。賞品としてお~いお茶1年分(525mlペットボトルが16ケース)を30人分用意した。4月3日までの期間中に10~30代という年代でターゲティングしたTwitter広告を3回出稿するなどしてキャンペーンを告知し、応募サイトに誘導したところ、KPI(重要業績評価指標)に設定していた応募サイトのPV(ページビュー)は目標の1.5倍になり、写真の投稿数も目標の4倍を超えた。

 一方、2月16日から3月16日まで実施した「とっておきのメッセージを贈る。お~い○○さん」キャンペーンは、オリジナルメッセージ(20字以内)と名前を印刷した特別パッケージのお茶が当たる企画だ。スマートフォン専用の応募サイトから、家族や友人などに20文字以内のショートメッセージを送ると、そのメッセージが印刷された商品が3000人に当たる。キュレーションメディアにバナーを出稿し、キャンペーンページに送客するなどしたところ、参加者は目標の2倍になる成果につながった。

 2つのキャンペーンとも企画を楽しむというより、プレゼント狙いの応募も少なくなかっただろうが、若年の消費者にリーチできたことは次につながる成果だと同社は評価している。

 とっておきの“春”キャンペーンで投稿された写真は、シャトルロックジャパン(東京都港区)が提供するツール「shuttlerock」を活用して一覧できるページを作成。自社のコンテンツの1つとして活用を始めている。今後もデジタル活用を進めて、さまざまなマーケティング施策の可能性を探っていく。

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