大手住宅メーカーのミサワホームが、自社でデータを保有・利用するためのデータ基盤であるプライベートDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を昨年夏に構築し、運用を始めている。ブレインパッドが開発・提供するプライベートDMPにレコメンドエンジンを組み合わせたマーケティングツール「Rtoaster(アールトースター)」を採用した。すでに顧客層に応じたコンテンツの出し分けなどで、キャンペーンの申込数や離脱率といった重視している指標で成果を上げている。

 戸建て注文住宅を取り巻く足下の環境はあまり芳しくない。住宅の引き渡しが増税後でも5%で契約できた2013年9月までは住宅着工数が前年を大きく上回ったが、同年10月以降は一転して反動減に見舞われた。10%への再増税が見送られたため、本格的な回復基調に至っていない。建設資材や人件費の高騰で住宅価格を下げることも難しい。

 それだけに、「そろそろ家を」と検討している貴重な潜在層を引き込むことが極めて重要になる。同社サイト来訪者は有力な購入予備群であり、年単位におよぶ検討期間を追い続ける必要がある。

前回訪問時にアクセスしたページの内容から、最適なカテゴリーのメニューを表示し、エリア別の販売会社のサイトへ誘導。エリア限定で実施しているイベント・キャンペーン情報などを露出し、参加・応募数を増やした

 まずRtoasterのレコメンド機能で、サイト再訪者に最適なコンテンツを表示するよう、ナビゲーションを改善した。同社のサイトには戸建住宅のほか土地・建物分譲、土地活用・賃貸経営、契約者向けのオーナーサポート、リフォームなどのカテゴリーがあり、土地・建物分譲については、検索行動から住居を求めているエリアを把握できる。

 そこで再訪者に前回訪れたカテゴリーのコンテンツを表示し、例えば福岡県エリアを閲覧していた場合は地域販社であるミサワホーム九州のサイトや九州エリア限定で実施しているキャンペーンバナーを表示した。同社はエリアの販社主導で新築資金1000万円、リフォーム資金500万円が当たるキャンペーンなどを展開している。当選した場合の用途が限られるため、購入希望者を集めることができる。

成約者の分析からシナリオ改善

 こうした表示コンテンツやナビゲーションの最適化に取り組んだところ、キャンペーンページへの誘導数は改善前の10倍増、キャンペーン申込数が増える一方で、離脱率も3ポイント以上低下し、滞在時間の増加、土地・物件探しをサポートする「分譲友の会」への登録も増えている。

 だが同社のWeb活用の目的は資料請求やキャンペーン申し込み増で終わりではない。同社住宅事業本部販売・商品企画部宣伝・Web企画一課の原亮太氏は、「最終的に成約に至った顧客のWeb上での行動分析に今春から着手している」と語る。どんなコンテンツや広告に接触し、どんな検索をしているかといったアトリビューション分析の結果次第では、コンテンツや誘導のシナリオを大きく変える可能性もあるという。

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