化粧品通販のオルビスが、自社EC(電子商取引)サイトの成約率やLTV(顧客生涯価値)の向上を目指して、複数のA/Bテストツールを駆使している。機能や運営体制から自社ECサイト、優良顧客の育成などの用途で使い分けて、効果測定をしている。テストの繰り返しで成約率を高めて売り上げを向上させるのと同時に、テストによって、ページの構成や表示すべき情報の知見を、次のサイト刷新に生かすことを見据える。

 オルビスがここ最近、力を入れているのが訪問者の行動履歴に合わせて、大幅にデザインを変更したページを表示するテストだ。従来、導入していたツールは、トップページに表示する画像のA/Bテストは実施できたが、ページレイアウトまで変えるような施策はできなかったという。そこで、昨年8月にインドのウィンギファイ製A/Bテストツール「Visual Website Optimizer」を導入した。このツールは、同一のURLで、訪問者に応じてページを出し分けられる。

既存顧客には簡素なページ

 具体的にはこんなテストを実施している。ファンデーションブランド「フォンダンリッチファンデーション」では従来、訪問者が「ファンデーション/下地」カテゴリーから同ブランドサイトを訪れると、「フォンダンリッチファンデーション特集」のページを表示していた(下左のページ)。

従来はリッチな表現と豊富な情報のページ(左)を表示していたが、A/Bテストの結果、既存顧客にはテキスト主体の簡素なページ(右)を見せることにした

 画像を多数使い、従来品との比較や商品開発部門のコメントを掲載するなど、リッチな表現と豊富な情報で商品を紹介する。ただ、「既存顧客は商品の特徴を既に知っているため、情報を減らして、すぐ購入できる導線設計にすべきではないか」(通販事業部メディア企画推進チームの大川真樹課長)という仮説があった。そこで、過去に該当商品の購買履歴がある既存顧客を対象に、情報量を絞ってすぐ購入できるページと、既存の特集ページを出し分けてテストした。

 テキスト主体の簡素な作りで、注文ボタンがすぐ目に入り、購入に進みやすい。このページは、特集ページと比較して、成約率(CVR)が3.1ポイント高い結果となった。

 ただ、オルビスでは1度の購入ではなく、その後にどれだけ顧客として定着したかを最重要視している。そこで、特に新規顧客獲得の効果が高いと見込まれるテストについては、LTVまでを含めた分析をするために、自社で開発したA/Bテストのツール上でテストを実施する。「自社開発のツールは機能面では専業のツールに劣るが、顧客データベースと直結しているため、顧客のLTVを含めてA/Bテストを評価できる」(大川氏)。

 こうしたA/Bテストを繰り返して得た知見やノウハウを、今後のECサイトの刷新に生かそうとしている。ただ、フォンダンリッチで成功した施策が、そのまま他の商品に当てはまるかというと、必ずしもそうではないという。こうしたことが起こる要因を大川氏は、「新規顧客とリピート顧客の割合が異なるなど、商品によって顧客層が異なることも1つ」とみる。

 そのため、A/Bテストの結果だけにとらわれず、これまでのECサイト運営やマーケティングで培ってきた顧客の購買行動を読み解く知見や、世の中のWebサイトのデザインのトレンドなども鑑みながら、より顧客体験の高い、サイトへの刷新を目指す。

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