東京・丸の内3丁目、日比谷濠と日比谷通りに面した東京商工会議所ビル、東京会館ビル、その裏手にある富士ビルの3棟を解体し、地上29階、高さ150メートル、敷地面積1万平米の高層オフィスビルを建設する「丸の内3-2計画」(2017年度竣工)が年明けからいよいよ動き始めた。

プロジェクト主体は三菱地所。昨年10月に閉館し、ひと足早く解体工事が進む富士ビルの仮囲いの前で、この2月から足を止めるオフィスワーカーの姿が散見される。そこに掲示されているのは、丸の内の風景を活写した写真の数々。三菱地所が写真共有SNS「Instagram」を活用して、ユーザーからの投稿写真を掲出している「Marunouchipix写真展」である。
三菱地所は昨年1月、Instagram上に投稿された丸の内関連の写真を並べる写真共有サイト「Marunouchipix」を開設した。#marupix、#marunouchi、#丸の内、#yurakucho、#有楽町、#otemachi、#大手町といったハッシュタグを付けてInstagramに投稿された写真を表示。その数は、6万4000点を超える(2015年1月末)。投稿写真の中から秀作を1日1枚「Today's Pick Up」として取り上げ、同社運営の丸の内情報ポータル「Marunouchi.com」でも掲載している。
取り組みの狙いは、丸の内の魅力をエリア就業者や来街者らと“共創”して発信することでブランディングを強化することにある。その任務を負う街ブランド推進部副長の加藤浩志氏は次のように語る。
「かつて丸の内は働くことに特化したサラリーマンの街だったが、品川や大崎などで新しいオフィス街が登場するプランが浮上して危機感を持ち、オフィスだけでなく飲食やショッピングも楽しめる複合的な成熟した街をコンセプトに街づくりを進めてきた。そして、その魅力を発信する媒体として、丸の内ポータル『Marunouchi.com』を立ち上げ、2013年4月にFacebookページ、2013年暮れにYouTube公式チャンネル、2014年1月に『Marunouchipix』を開設。丸の内の今を可視化し、活性化することを目指している」
“丸の内PR大使”の力を借りる

今回の写真展では、MarunouchipixやFacebookページなどで、オリジナルのハッシュタグ「#marupix」を付けてInstagramに写真を投稿するよう呼びかけ、Marunouchipixに表示した写真の中から毎日数枚を、富士ビルの仮囲いに貼り出している。オンライン投稿をリアルに展開して、無機質な工事現場を彩るユニークな企画だ。
掲示は今年の秋ごろまでを予定している。丸の内仲通り側の約100メートルの囲いを写真で埋め尽くしたい考え。同推進部の松島香織氏は、「掲示された写真を撮った方は現場を訪れ、それを写真に撮って広めていただける。われわれが一方的に発信するだけでなく、こうした“丸の内PR大使”とも言うべき方々の力をお借りして一緒に盛り上げていく体制をつくっていきたい」と語る。
国内企業におけるInstagram活用は、人気モデル・タレントがInstagramアカウントを開設して多数のフォロワーが付いている流れから、ファッション・アパレル業界での活用が先行している。それだけに三菱地所の取り組みは、広く他業界でも活用の可能性があることを示していると言えるだろう。