「EC(電子商取引)サイトの購入者のうち、コンビニ受け取りを利用する人が約7割にまで達している」

 こう明かすのは雑貨店チェーンのロフト(東京都千代田区)の執行役員営業開発部部長の内海芳雄氏だ。同社は現時点でECサイトを持っておらず、グループ会社であるセブン&アイ・ネットメディアが運営するECモール「セブンネットショッピング」上で、一部の売れ筋商品を販売している。同サイトで昨年5月から、ロフトの商品をネットで購入してセブンーイレブンで受け取れるサービスを始めたところ、利用者が急増しているという。

 コンビニ受け取りの利用率が高い理由はロフトの顧客層にある。「当社の顧客は女性が非常に多い」(内海氏)。消費者を集めたグループインタビューでも、1人暮らしの女性の中には、宅配を避け、コンビニで受け取りたいというニーズが強く、そうした顧客に受け入れられているとみる。

 こうした、コンビニ受け取りサービスはセブン&アイ・ホールディングスがグループ一丸となって始めるオムニチャネル戦略に則ったもの。セブン&アイは、グループ全体のオムニチャネルの本格開始を今秋に予定しており、ポータルサイトの刷新を進めている。これに合わせる形で、ロフトも自社ECサイトを構築中だという。

ダウンロード件数は4カ月で約60万件

 ECサイトの開始に先駆けて、昨年11月に提供を始めたのが、スマートフォン向けアプリ「ロフト」だ。ロフトはこれまで会員制度などがなく、データ活用のための顧客基盤を持っていなかった。アプリを先行して始めることで、ECサイトの開始と同時にすぐに利用してもらうために、顧客基盤を整備することを狙う。

「コトキジ」では商品に関連したコラムを配信

 アプリは利用時に会員登録をする必要がある。主なコンテンツとして新商品などの情報を伝える「モノキジ」と、ロフトで扱う商材である雑貨にまつわるコラムなどの記事を配信する「コトキジ」の2つを用意している。ロフトのオムニチャネル担当部門のうち、アプリの担当者が記事を制作して配信する。

 例えば、コトキジでは老舗万年筆ブランドのペリカンの歴史を振り返り、年代ごとの製品の特徴を比較しながら紹介する記事や、時計修理の専門家による修理工房の現場紹介といった記事を配信している。また、毎月コスメやアクセサリーなどの詰め合わせが届く、フランス発の女性向けサブスクリプション型のEC「My Little Box」と提携して、同サービスが発行する情報誌に掲載された記事などをアプリにも配信している。また、アプリ利用者限定のクーポンなども配信している。

 アプリの利用者は広告などを使わず、店舗での獲得を目指している。店舗のレジ周辺で店員が、ロフト発の情報を見られることを伝えて、アプリの利用を促している。既にダウンロード件数は約60万件という規模になっており、毎日4万~6万人が利用しているという。「ダウンロードした人の9割が利用を継続している」(内海氏)。秋のECサイト開始時までに、150万件のダウンロードを狙う。また、アプリ利用者の75%を女性が占めるのも、女性顧客が多いロフトならではの特徴だ。

 こうして、顧客基盤を築いた上で、ECサイトの開始時にアプリで商品を購入できるようにして、グループのオムニチャネル化を推進する柱の1つとなる計画だ。

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