高層マンションの建築ラッシュが続く東京湾岸エリア。三井不動産レジデンシャルが東京・中央区晴海で今年10月から販売を予定している地上48階建ての大規模タワー物件「パークタワー晴海」(2017年秋入居予定)では、LINEを活用して、資料請求件数の底上げを目指している。

LINE登録者からの問い合わせに自動応答する「パークタワー晴海」のLINEアカウント

 同物件のLINEアカウントを友だち登録したユーザーに対し、登録のお礼に続いて「知りたいこと」を質問し、入力されたキーワードに応じてあらかじめ用意した回答を自動的に返信する。以下のような具合だ。

 パークタワー晴海「どんなことを聞いてみたい?『マンションのこと』『晴海のこと』知りたいと思うキーワードを送ってみてね」

 友だち登録者A「マンション」

 パークタワー晴海「どんな物件情報が気になる??『基本情報』『共用空間』『眺望』『間取り』……」

 友だち登録者A「間取り」

 パークタワー晴海「見たいお部屋の間取りを教えてね。番号を入力すればOKだよ♪ 1LDK=『1』 2LDK=『2』……」

 こうして「間取り」のリクエストには希望間取りの画像、「眺望」のリクエストには都心側か水辺側かを追加質問して、希望する側の高層階からの写真を送信。それに続いて、「資料請求してもらえれば、その他についても、もっと詳しい物件情報が分かるよ~!」というメッセージを送る流れだ。「銀行」「コンビニ」といった周辺施設に関する問い合わせキーワードにも、現時点で同社の物件情報サイトに載っているレベルの情報は自動応答するように設定している。

 同社が利用しているのは、LINEの企業向けサービス「LINEビジネスコネクト」。顧客データベースや言語処理システムなどと連携して、企業とユーザー間で個別かつ双方向のワン・トゥ・ワンコミュニケーションが可能になる。

 LINE活用の狙いについて、同社開発事業本部都市開発二部営業室主査の牧野惣一氏は次のように説明する。「物件サイト流入者のうち資料請求に至るのは約1%。資料請求は、住所のほか予算や自己資金の項目もあるため、どうしてもハードルが高い。しかしそこにLINEのアカウントがあれば、比較的気軽に友だち登録していただける。そして双方向のやりとりを経るうちに機が熟して資料請求につながってほしい。資料請求のハードルを下げる役割に期待している」。

 物件によって大きく異なるが、モデルルームに来場するのは資料請求者の1~2割、そこから最終的に購入に至るのも1~2割が相場だという。したがって早期完売のためには、総戸数の25倍~100倍の資料請求数が目安になる。パークタワー晴海は総戸数1084戸の大規模物件だけに相当な数が必要だ。

友だち数の目標は早くもクリア

 大手住宅情報サイトへの出稿や、物件サイト来訪者へのリターゲティング広告配信など、基本的なことは対策済み。物件サイト流入数を増やすと同時に、つながりを維持する必要があるとの判断から、LINEに期待を寄せている。

 1月9日にアカウントを開設してから1カ月半、友だち数は8万3000人を超える(2月25日時点)。物件のモチーフであるクジラの無料スタンプを配布しているが、LINEアプリ内の「スタンプショップ」を介さずに配布する「LINEダイレクトスタンプ」のため、スタンプ目当ての登録は起こりにくく、ブロック率は「極めて少ない」(牧野氏)。今年10月からの販売開始を前に、「8カ月間で友だち数5万~10万人」を目安としていたため、すでに目標はクリアしつつある。

 狙い通りLINEから資料請求数を上積みして、LINE経由の物件購入者が何件登場するか。その成果次第では、販促手法がやや固定化していたマンション業界に変化が訪れそうだ。

 ちなみに、同LINEアカウントへの「価格」の問い合わせに対しては、「販売価格のことかな?まだわからないから答えられないんだ・・・ごめんね・・・・」と自動返信している。

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