「リーチ力のLINEに拡散力のTwitter、この組み合わせでキャンペーンを盛り上げていく」。ファミリーマート商品本部商品企画・業務部販売促進グループの近藤大輔マネジャーは、ソーシャルメディアを活用したキャンペーンの運用方針についてこう説明する。同社はソーシャルメディアの各アカウントをマス媒体向け広告などを担当するマーケティング室で運用してきたが、2014年からLINEとTwitterは商品本部の管轄となった。集客の要である商品企画と販促を担う最前線の部署だ。
同社のソーシャルメディア上の投稿は専用キャラクターである「宣伝担当の日々野優」がお届けする体裁。TwitterとFacebookは同じ内容の投稿も多いため、両部署の担当者は密に連絡を取り合っている。2週間程度のキャンペーンで来店・購入につなげる瞬発力勝負の局面では、LINE×Twitterの2本柱が武器になる。

例えばふなっしーの中華まん限定発売といったエンタメ要素の強い企画は頼まずともTwitterで拡散していくため、ふなっしーまん発売中の投稿を控えたほど。また昨年11月、セーラームーン20周年の企画では、Twitterアカウントをフォローして企画の告知投稿をRTするとプレゼントが当たるリツイートキャンペーンを実施したところ、RTは1万8000件に上った。
LINEは昨年6~7月に実施したサッカー日本代表応援プロジェクトの際に配信したザッケローニ監督(当時)の応援スタンプが友だち登録を促進し、現在870万人超。月1回ペースで割引クーポン配信を実施し、配信から3~4日以内に数万人が来店、利用する効果がある。ウルトラマンとタイアップした昨年12月のドリンク剤キャンペーンでもマストバイLINEスタンプを配信し、新たな友だちの獲得に余念がない。
一方、Facebookページの方は、こうしたお祭り一色の企画からは一歩引いた運用だ。
「AllAbout」のガイドが考案した「コーヒーに合う商品アイデア」から人気投票で上位の商品を発売する企画、「食べログ」と共同で人気レストランのシェフが考案したメニューを投票で商品化する企画など、“大人”の意見を反映させたい企画ではFacebookをプラットフォームにしている。また、海外で取り組んでいる防災教育のレポート、ファミマの緑と青のコーポレートカラーについての解説、ファミマカフェのコーヒー豆に関する豆知識など、CSRを含めたコーポレートPRの投稿が多いのも特色だ。
こうした使い分けを進めた結果、ファミマではソーシャル接触者のうち同社の情報をLINEから得ているLINE接触者率(20.1%)がFacebook接触者率(18.9%)を上回った。これはファミマだけの現象ではない。今回、ファミマと同様に逆転した企業はファミマも含めて5社あった。また、Facebook接触者率とLINE接触者率の前年比増減を調べると、Facebookは前年比マイナスが過半数の56社に上り、同プラスは半分の28社。LINEは同プラスが70社、マイナスが14社と、Facebookと対照的に伸びを見せている。主役交代を示すデータである。
ではFacebookページはもはや主役たり得ないのかと言えば決してそうではない。

Facebook接触者率が前年比プラスの“少数派”ながら、消費行動スコアが前年の39.3から65.8へ、ランキングで85位から9位へと躍進をみせたのがミニストップだ。
Facebook投稿がゼロの日も
2013年までと2014年以降で運用方針を変えたのだろうか。同社でソーシャルメディアを担当する第二商品本部EC・サービス部の中井智律子氏は、「Facebookページの投稿を1日3回から1日1~2回に減らした。ゼロの日もある」と説明する。
同社にもファミマの日々野優、ローソンのあきこちゃんに相当するソーシャル専用キャラクターがいる。たれ耳うさぎのゆるキャラ「ミミップくん」だ。2012年の登場当時は、とりたてて話題がなくても「あさミミ~☆」「ひるミミ~☆」と投稿し、公園や浜辺でひと休みするミミップくんの写真を載せるだけでもいいね!とコメントが多数寄せられた。
だがその運用スタイルは長くは続かなかった。「Facebookが情報収集ツールとして定着」(中井氏)したことで、中身の薄い投稿は次第に敬遠されるようになった。
ミニストップの特色は、レジ前のホットスナックやアイスや「ハロハロ」などのスイーツ類をイートインできること。商品は定期的に入れ替わるので、新商品を楽しみにしているファンは多い。こうした新商品やセール中の商品など、いま来店するとおトクな情報をストレートに投稿することにした。ソーシャルメディア普及初期は「宣伝は嫌われる」「雑談で絆が強まる」などと言われたものだが、時代は変わったようだ。
それでも同社の投稿が売り上げに貢献したのは、「お客の立場で知りたいこと」を先んじてお知らせする姿勢を貫いたことにある。
「ソーシャルメディア上で『ミニストップ』を検索すると、『近所にない』(笑)という投稿と並んで、『○○ソフト食べたかったけどもう終わってた』という、期間限定商品を逃したことを悔やむ書き込みが目に留まった」(中井氏)。

そこで2014年から、期間限定品の販売終了数日前に「まもなく終了」の告知を出している。この投稿には「そうだった、今日仕事終わったら寄ろう」「もう一度食べ納めしておこう」といった売り上げに貢献しそうなコメントが少なからず付く。
新商品を案内する日にも気を使っている。ニュースリリースでは次期限定商品を発売1~2週間前に発表するが、そのタイミングで投稿すると、発売中と思って来店しガッカリさせてしまう恐れがある。そこで、販売終了告知の際に「次はこちら」とニュースリリースページのリンクだけ記し、発売当日に写真付きで投稿するようにした。
お客が購入できる・購入したくなるタイミングを的確にとらえて投稿すれば、Facebookページからの売り上げ貢献はまだまだ可能だ。