消費行動スコアランキング上位企業は、「主力プラットフォームをLINEやTwitterにシフト」「Facebook活用を深化」に対応が割れた。その取り組みを追う。
ソーシャルメディア戦略活用の主役はまだFacebookなのか、あるいはLINEやTwitterに譲るのか──。もちろん、正解はない。企業が開設するFacebookページからの無料投稿がファン登録者の何%に表示されるかを示すリーチ率が年々下降する中、この難問に正面から向き合い、自社なりの解を見いだして新たな取り組みをした企業が、売り上げ貢献でも成果を上げていた。本誌がここで発表する「第4回ソーシャル活用売上ランキング」から見えてきた結論である。

ランキング上位企業や大きく順位を上げた企業の具体的な取り組みについては後述する。まずランキングの趣旨、概要を説明しておこう。
ソーシャルメディア活用の成果を報告する際、「ファン数が増えました」「いいね!がたくさん付きました」ではもはや通用しないだろう。「で、売れたの?」と多くの企業で売り上げへの寄与を問われている。本調査はまさにソーシャルメディア公式アカウントの売り上げ貢献度を明らかにするものだ。1万5880人の消費者アンケートを基に、ソーシャルメディア上で各企業・ブランド発の情報に接触した人(=ソーシャル接触者)のうち、「購入や利用の候補に加えた」「購入・利用した」「繰り返し購入・利用するようになった」と回答した人の割合を算出し、偏差値化したものを「消費行動スコア」としてランキングしている。
前年まではもう1つ、Facebookページのファン数やTwitterのフォロワー数、LINEの友だち数などから情報発信力を数値化した「リーチスコア」を集計し、両スコアから総合スコアを算出して総合ランキングを作成していた。だが今回は「消費行動スコア」に絞り、売り上げ貢献ランキングに純化することにした。
理由はいくつかある。米フェイスブックは企業のFacebookページからの投稿リーチ率を下げることでFacebook広告の活用を促しており、ファン数の多寡が売り上げ貢献に与える影響が下がっていること。Facebookページを海外本社と共用するグローバルアカウント運用が進み、国内ファン数を正確に把握することが難しくなっているのも一因だ。
また、LINEの友だち数はスポンサードスタンプを実施したかどうかで数百万人規模の差が出てしまう。ただ、その友だちの少なからぬ割合は、スタンプ入手後に企業からの投稿をブロックするようになってきており、有効な友だち数は不透明だ。調査対象100社・ブランドをノミネートする際にファン数などの「量」で既に一定の線引きは済んでいる。本調査では売り上げ貢献という「質」に特化してランキングすることにした次第である。
Twitterシフト奏功し、1位へ
上位企業の顔触れを見ていこう。首位に立ったのは「スターバックス」だ。消費行動スコアは昨年より9.6ポイント高い75.7で昨年の9位から上昇、2位の「無印良品」(75.5)を僅差で抑えた(総合スコアでは昨年1位)。
スターバックスコーヒージャパンは昨年、注力するプラットフォームをFacebookからTwitterへ変えるという戦略の大転換を敢行したことが奏功したようだ。
スターバックスのFacebookページは2013年4月に過去最高のリーチを叩き出した。しかし、運用方法を変えていないのにリーチはみるみる下落。最も減少した月では、過去最大値の半分以下になった。その後、持ち直しつつあるが、「いつまた同じことが起こるとも限らないという印象を抱く。アルゴリズム変更後は、力を入れにくくなった」とマーケティング・カテゴリー本部マーケティングコミュニケーション部WEB/CRMグループの長見明グループマネージャーは漏らす。

一方で勢いを増しているのがTwitterだ。上のグラフはスターバックスのFacebookのファン数とTwitterのフォロワー数の推移を示したもの。2014年5月にTwitterのフォロワー数が、Facebookのファン数を上回っている。その後も差は広がり、12月にはTwitterのフォロワー数が154万2020、Facebookのファン数は115万9601となり、40万近い差がついた。

売り上げに与える影響も増している。「新商品がTwitterなどで話題になると、初日の売り上げが予測の2~3倍になるケースも少なくない」(長見氏)。例えば、昨年7月に発売した「ストロベリーディライトフラペチーノ」に関するツイートは、リツイート(RT)数が3万1223件で、過去最高となった。実際、同商品は売れてしばらく品薄になった。こうしたことがあるため、店舗からは「ソーシャルメディアで話題になるかどうかを予測してほしい」という要望も寄せられているが、実際には難しいという。「すぐに商品を追加調達できる体制を整えることの方が重要だ」と長見氏は考えている。
毎年、新商品が登場するフラペチーノほどメジャーな商品ではないが、Twitterでの紹介で売り上げにつながった例はほかにもある。「オレンジクランベリースコーン」という商品が、スターバックス社員の女性から人気を集めていた。これに目を付けて、Twitterでツイートしたところ、「前日比で相当な数が売れた」と長見氏は明かす。こうした現象を踏まえ、長見氏は「商品としては既存商品でも、付加価値を付けることで話題になり購買につながる」としつつ、「消費者が自然に共感できるような付加価値であることが重要だ」と付け加える。スターバックスのソーシャルメディアは消費者に寄り添った存在であることを目指していく。