「ポリンキーポリンキー三角形の秘密はね」「ドンタコスったらドンタコス」――。
こうした印象的なフレーズのテレビCMで一世を風靡したのが、菓子メーカーの湖池屋(東京都板橋区)だ。同社は新商品の発売に合わせたテレビCMで認知をとり、売り上げにつなげてきた。そんな同社が2月2日に、ポテトチップス「頑固あげポテト」のテレビCMの放送を始めた。ところが、従来と全く異なる点がある。昨年2月の発売から1年間、テレビCMを放送していなかったのだ。なぜ、そんな戦略をとったのだろうか。

マーケティング本部マーケティング部広報課の小幡和哉氏はこう語る。「スナックでも定番として残れるのは年に1~2ブランド程度。従来のように、新しいブランドで一気にテレビCMを放送しても、勝ち残れる時代ではなくなった」。
こうした背景もあり、かつてのテレビCMの巧者もマーケティング戦略の見直しを求められた。そこで、頑固あげポテトでは、一気に認知をとって売るのではなく、まずはネット上の動画を軸としたデジタルマーケティング施策を実施して、じっくりとブランドを育てる戦略をとった。
一斗缶ポテチで話題呼ぶ
一斗缶に湖池屋の商品を詰め合わせた「伝説の一斗缶ポテチ」を1000人にプレゼントしたキャンペーンはその1つ。頑固あげポテトの約30秒のネット専用CM動画を、最後まで閲覧すると応募できた。「ブランドや商品を覚えてもらう上で、情報量の多い動画はうってつけと考えた」(マーケティング本部マーケティング部第1課の柏倉祐太氏)ことから、動画の閲覧を条件にした。キャンペーンはデジタルマーケティング支援のアライドアーキテクツが企画した。
賞品が一斗缶入りであることにも理由がある。創業時はポテトチップスは個別包装しておらず、一斗缶に入ったものをその場で袋詰めにして販売していたことに由来している。頑固あげポテトは創業時の製法を再現した商品。その関連性から、キャンペーンでは創業時をイメージさせる賞品を用意した。
一斗缶ポテチというキャッチーさが受けて、様々なネットニュースを通じて話題が広がった。パッケージにもキャンペーン情報を記載。購入者にもキャンペーンに参加してもらい、商品のことをより深く知ってもらうことを目指した。
昨年5月12日~10月5日のキャンペーン期間で、約27万人の応募が集まった。小幡氏は「設計が異なるため、単純比較はできないが、通常のプレゼントキャンペーンのおよそ6倍の数となった」と驚きを隠さない。
この結果、頑固あげポテトは2014年12月までに2500万袋を出荷するヒット商品となった。商品の売れ行きが好調になるにつれ、既存流通での配荷率も高まった。ここをアクセルを踏むべきタイミングと捉え、今年2月にネット専用CMだった動画をテレビCMとして放送し始めた。これにより、さらなる売り上げ増を狙う。