「梨汁ブシャー」でおなじみの人気ゆるキャラ「ふなっしー」が、花粉症で「鼻汁ブシャー」。そこに救いの手を差し伸べるのはカプセル型のキャラクター「Mr.コンタック」──。

「コンタック」ブランドの市販鼻炎薬を発売するグラクソ・スミスクライン(東京都渋谷区)は、2015年の花粉症シーズンに先立ち、自社キャラクターよりも知名度の高い人気キャラクターを招聘し、デジタルメディアを舞台にしたキャンペーン「Mr.CONTACと一緒にふなっしーを助けよう!くしゃみSONG Project始まる。」を展開中だ。
2月5日の夜9時から「ニコニコ生放送」にふなっしーとMr.コンタックが出演し、「コンタック くしゃみSONG」の収録の模様を生中継。公開レコーディングの来場者数は2万4000人を超え、ソーシャルメディアを通じて両キャラクターとの交流を楽しんだ。
キャンペーン特設サイトでは、1月20日から2月末日まで「みんなのくしゃみ」を募集している。応募方法は、YouTubeで動画投稿、Instagramアプリで動画投稿、携帯電話・スマートフォンから音声録音の3種類。Instagramの投稿受け付けは、アライドアーキテクツのキャンペーンプラットフォーム「モニプラ」を利用した。投稿特典として、カプセル型に扮したふなっしーのスペシャル画像を3パターン用意し、ランダムにプレゼントしている。
一見すると、ふなっしー人気に頼ったお笑い企画に映るかもしれない。くしゃみ募集もユニークだが、くしゃみの収録を考えるとハードルは低くはない。だがその裏では、増え続けるスマートフォン利用者をターゲットにした販促の道筋をしっかり描いている。
同社コンシューマーヘルスケア事業本部マーケティング部ブランドマネージャーの須田崇行氏は、「いざ花粉が飛び始めてどの市販薬を指名買いするか。これは店頭に行くまでのブランドの“刷り込み”で決まる」と言う。同社は例年、テレビCMを中心に交通広告なども手がけてきた。しかし依然として影響力は大きいとはいえCMが届かない層は着実に増えつつあり、一方で通勤・通学の乗客はずっとスマホ画面に目を落としている。そこで「ふなっしーがコンタックのキャラクターと何かおかしなことをやってる」という話題づくりによってスマホでのブランド認知獲得を目指したのがこの異色コラボ企画である。
そして、くしゃみの応募数よりも重視しているのがブランドサイトへのアクセス数だ。コラボ企画はWebニュースメディアで記事化されクチコミも広がっているため、特設サイトへのアクセスは順調に増えているが、そこからコンタックのラインナップや医療用成分についての説明があるブランドサイトへの流入を伸ばしてコンタックの“刷り込み”機会を作りたい考え。
さらに、面白ネタとして瞬時に消費されずに店頭まで誘導する施策として、Mr.コンタックのマストバイLINEスタンプの提供を2月3日から開始した。特設サイトで告知。キャンペーンラベルが付いたコンタック商品の購入客は、ラベルに記載されているシリアルナンバーをスマホから入力することでオリジナルスタンプを入手できる。
花粉の飛散量は多い年と少ない年が交互に表れる傾向があり、今年の関東圏は多い「当たり年」になる見込み。花粉症持ちには悩ましい限りだが、製薬メーカーにとっては商機であり勝負の時期だ。
市販鼻炎薬市場は現状、2年前の花粉症シーズンに登場した久光製薬の「アレグラFX」が優位に立っている。アレグラは人気アイドルグループ嵐の大野智を起用したCMを中心に展開している。
来年2016年に国内発売50周年、Mr.コンタック登場20周年を迎えるコンタックは、「かかったかな、と思ったら」「1日2回、飲めば効く」といったCMフレーズで地位を築いた。そんなマス広告の王道を歩んできたロングセラーブランドが、スマホユーザーに着目してデジタルに舵を切ったことはその成否以前に画期的で、消費者のメディア接触の変化を物語っている。