化粧品メーカーのドクターシーラボは今春、テレビショッピング風の動画で商品を紹介するEC(電子商取引)サイトを開設する。既に1月、自社でテレビショッピング風の動画を制作できる体制を整えた。既存のブランドサイト内に、動画を主要なコンテンツとし、そこで紹介している商品を購入できるサイトを新たに設けて、その可能性を探っていく。
ドクターシーラボは2015年7月期に注力するWeb施策として、動画コンテンツの強化を掲げている。その理由は大きく3つある。1つ目はネットを利用する端末の変化だ。「スマートフォンの利用者が増える中、ページが複数に渡るようなコンテンツより、分かりやすくて簡単に情報を得られるコンテンツを好むようになってきている印象がある」(ドクターシーラボのマーケティング部eコマースグループの鈴木弘子氏)。そこで、直感的に商品の魅力などを伝えるには動画が向いていると判断した。
もう1つは、SEO(検索エンジン最適化)対策だ。「『Google』の検索結果に、『YouTube』動画が上位に表示される機会が増えている。今後、SEOを強化する上でも動画は重要になると考えた」と鈴木氏は言う。消費者が、検索行動をきっかけに動画を閲覧することは一層増えるだろうと見ている。
3つ目は、テレビのインフォマーシャルが好調なことだ。「テレビとネットでは動画に接する態度が異なるとは言え、動画が購買を促進する効果は高い」(鈴木氏)と期待を寄せる。
こうした理由から、商品の使用方法を伝えるハウツー動画などを昨年から制作してきたが、課題もあった。それは「自主制作では、質の高い動画を作ることが簡単ではなく、と言って外注だと、費用がかさみ、たくさん制作することができず、スピードも鈍る」(鈴木氏)ことである。
動画が購買に与える影響を検証
その解決策として、自社で手軽に動画を制作できるツールを新たに導入した。それがスマートフォン向け動画作成アプリ「1Roll for Business」で、デジタルマーケティング支援のフレイ・スリー(東京都港区)が提供している。ドクターシーラボは動画作成に当たって、ハウツー動画とテレビショッピング風の動画を撮影できるテンプレートを制作した。そのテンプレートに沿って、スマートフォンで撮影するだけで動画が作成できる。

例えば、2月3日にYouTubeで公開した基礎化粧品商品「アクアコラーゲンゲル エンリッチリフトEXスペシャル」の動画は、マーケティング部の担当者が登場して、商品の魅力を伝える。動画の中に、商品ページへのリンクボタンを表示できるYouTubeの機能を使って購買を促している。
今後こうした動画を多数作成して、動画をメーンコンテンツとするECサイトを、既存の商品サイト内に開設する。「新たなECサイトに掲載するテレビショッピング風の動画は、購買を強く促す内容になる。ブランドを意識して制作してきた既存の商品ページとは性質が異なるため、サイトを分けるべきだと考えた」と鈴木氏は説明する。
これまでは、動画が購買に与える効果の分析が十分にできていなかったが、新たに開設するECサイトでは、その検証にも取り組む。
並行してハウツー動画も制作し、こちらは商品ページで活用していく方針だ。従来は月に2~3本程度が限界だったが、新たなツールの導入によって、テレビショッピング風動画と合わせて「月に10本ずつ制作」(鈴木氏)できる体制が整った。動画活用のアクセルを踏み、その効果を高めていくことを目指す。
記事掲載当初、動画ECの開設先を「ブランドサイトとは別に」として記載していましたが、実際には「ブランドサイト内」の開設でした。本文は修正済みです。[2015/2/9 22:00]