「酔虎伝」「八剣伝」「居心伝」など複数ブランドの居酒屋をチェーン展開するマルシェが、昨年12月に傘下の居酒屋約600店にビーコン端末を導入。10月15日に提供を始めたスマートフォン対応公式アプリ「マルシェ公式アプリ」と連携することで、ネットを介して消費者に来店してもらうO2O(オンラインtoオフライン)マーケティングを強化している。
公式アプリをダウンロードした顧客がマルシェ傘下の居酒屋に来店すると、店の入り口付近に設置したビーコン端末が検知し、ユーザーのスマホ向けにプッシュ通知を送る。ユーザーがマルシェ公式アプリを立ち上げていなくても、プッシュ通知を開くと自動的に公式アプリが立ち上がり、アプリ上でチェックインできる。すると、チェックインしたユーザーに対してアプリ上で来店ポイントが付与される。一定数のポイントをためると、抽選式の懸賞に応募できる仕組みだ。公式アプリへ配信する商品メニューや割引キャンペーン情報などと併せ、「アプリを利用する来店客の満足度を向上させ、各店の売り上げ増を目指す」(人事総務部総務課の村上貢サブリーダー)と言う。
マルシェが、公式アプリに加えてビーコン端末まで導入した最大の理由は、「店舗のオペレーションに負荷をかけずに客を呼び込める仕組みを、いち早く構築したかったから」(村上氏)だ。
多くの外食産業が共通して直面する「現場スタッフの人手不足」は、マルシェのような居酒屋チェーンでも例外ではない。多くの店では少ない現場スタッフをやりくりして、来店した利用客へ丁寧に接客し、迅速に対応することを目指している。そこにアプリへの情報配信といった新しい仕事を持ちこんだ場合、仮にその効果が高かったとしても、店によって対応がばらつくのは想像に難くない。来店してアプリを利用しようとした客から見れば、同じ看板を掲げた店で対応が異なることになる可能性が高くなる。
そこでビーコン端末を各店に一斉に導入し、アプリに配信する情報やビーコン端末が検知して送るプッシュ通知の内容は本部が一括して作成し、管理する仕組みを採用した。加えて、ビーコン端末を導入することで、「アプリをダウンロードしたことを来店時に忘れているような客に対し、アプリの存在を思い出させる“トリガー”になる」(村上氏)という狙いもある。
アプリのダウンロード増が当面の課題
サービスは始まったばかりなため、ビーコン端末とアプリを使ったO2O支援サービスによって、来店客の満足度が上がって店の売り上げがどれだけ増加したかという効果はまだはっきりしていない。ただ、当面の課題は、「アプリのダウンロード数を増やすこと」(村上氏)だという。
サービス開始前は、各店につき利用客100人強が公式アプリをダウンロードすれば、6万~10万ダウンロードはすぐに達成できるのではないかと見込んでいたようだが、現状は目標である10万ダウンロードに届いていない模様。サービス開始当初、店舗内でのアプリのダウンロード数が約600店の中で最も多かった東京都府中市の居心伝 分倍河原駅前店の場合、店長による「こんなアプリがあるんですけど…」という来店客への丁寧な説明が、ダウンロード数の増加に貢献したという。
12月~1月は忘年会・新年会シーズンに当たる繁忙期で、店のスタッフが利用客に説明し切れていなかった面も大きい。「2月以降に店頭でのアプリの説明に力を入れ、アプリのダウンロードが店の売り上げ増につながる事例を増やし、それを多くの店に知らせて、広く展開していく」(村上氏)考えだ。
記事掲載当初、居心伝 分倍河原駅前店の地域が誤っていました。本文は修正済みです。 [2015/2/12 13:00]