転職情報サイト大手のエン・ジャパンは2014年8月18日、社会人向け転職情報サイト「[en]社会人の転職情報」をリニューアルし、「エン転職」に名称変更した。同サイトは1995年7月に転職情報サイトの先駆けとしてスタートしてから20年の歴史を持つが、大規模なリニューアルは2006年以来8年ぶり。2014年10月の求人1件当たりの応募数は、リニューアル前の同年6月と比べて1.6倍に伸びた。特に女性や若手の求職者からの応募が増えているという。

スマホユーザーファーストのリニューアルで応募数を伸ばした「エン転職」

 転職情報サイトといえば、リクルートキャリアの「リクナビNEXT」、マイナビの「マイナビ転職」、インテリジェンスの「DODA」、ビズリーチ(東京都渋谷区)の「BIZREACH」、キャリアデザインセンターの「@type」といった、いずれも知名度のあるサイトがしのぎを削る激戦区だ。求人情報をさまざまな条件で検索できるのはもちろんのこと、求職者がプロフィールを公開して企業側がアプローチするスカウト機能など、機能面でももはや大差はない。

 そこからどう差異化を図っていけばよいか。この課題に対し、リニューアルを率いたエン・ジャパンデジタルプロダクト開発本部の寺田輝之本部長は、「アクセス解析によるWeb行動分析の強化、外部調査機関への調査依頼、100時間を超えるグループインタビューを実施し議論した結果浮かび上がったのが、スマホユーザー重視のリニューアルだった」と説明する。

 同社は決してスマホシフトの動向に対して無策だったわけではない。2012年3月にスマホ向けサイトを開設し、気になる求人をワンタップで保存できるクリップ機能や、希望条件を保存して次回以降手軽に検索できる機能などを用意していた。そのかいあって、「2014年の求人応募はパソコン経由とスマホ経由の割合がほぼ半々。2012年と比べるとスマホ応募は約5倍、アクセス数で見ると実に7倍になっている」(デジタルプロダクト開発本部エン転職グループの佐原潤マネージャー)。

スマホ利用の伸び阻害する2つの要因

 普通なら「スマホは対策済み。利用者が伸びて成果も出ている」と考えてもおかしくない。だが同社はそこで妥協しなかった。さらに増えていくスマホ利用を利用者目線で考え、伸びを阻害する要因を2つ挙げて、その緩和に取り組むことにした。

 1つは、転職検討時に閲覧する情報量の多さだ。これが飲食店探しならば例えば「食べログ」でエリアやジャンルを指定してよさそうな店があれば即決してしまうことが多いが、転職ともなるとさすがにそうはいかない。エン転職で気になる求人を見つけたら、その企業サイトに飛び、クチコミや評判を検索して回り、という具合に複数のサイトを横断する。スマホでの大量の情報収集は容易ではない。

 そこでその負担を軽減するため、求人情報ページにその企業のクチコミ情報を併記するようにした。「募集情報」と「クチコミ情報」のタブを切り替えるだけで見ることができる。このクチコミは、2011年11月からエン転職とは別個に同社が運営してきたクチコミサイト「カイシャの評判」からピックアップしてきたもの。社員や元社員が、仕事のやりがいや会社の成長性、給与、社員の定着度、人事の納得度などについて採点、記入した回答を蓄積している。

 元社員の投稿も含むクチコミだけに、中には厳しい意見もある。「営業がやりづらいという反対の声ももちろんあった」(寺田氏)。それでも求職者がワンタップで本音のクチコミに触れることができ、求人側と求職者側のミスマッチ解消につながることは求人企業にとってもメリットが大きいという原理原則論で押し切った。

 スマホ利用の伸びを阻害するもう1つの要因は、入力量の多さだ。エン転職でプロフィールを登録する「WEB履歴書」の入力項目は、学歴、在籍社名から職務経歴、保有スキル、志望動機、自己PRなど多岐にわたる。リニューアル前はパソコン版と同じ、縦長の入力インターフェースだった。これを入力意欲を削がぬよう、1ページに1~数項目の入力欄に改めた上に、自動保存することで途中離脱からの再入力もしやすくした。WEB履歴書の上部に「プロフィール【済】」「自己PR【未】」という具合に表示することで、記入済みと未記入がひと目で分かる工夫を施している。

 主にこの2つの取り組みが当たり、10月の応募数は刷新前の1.6倍に伸びた。サイト刷新した8~9月にかけて、電車内動画広告(トレインチャンネル)やLINE公式アカウント開設およびスタンプの配信などプロモーションも積極的に仕掛けたが、2014年12月はさらに応募数が増えており、単に一過性のプロモーション効果で伸びているわけではないことは明らかだ。

 寺田氏は、「転職の情報収集や履歴書の入力はパソコンから…と思う人が多いかもしれないが、若年層は空いた時間にスマホから入力して、そのままためらいなく応募ボタンを押す。グループインタビューで挙がった声に沿って入力改善に取り組んだことは正解だった」と振り返る。「スマホ専用サイトは既にあるから、ユーザーのスマホシフトは対策済み」で思考停止していないか。乾いたぞうきんが工夫次第でまだまだ絞れる可能性があることを、エン転職のリニューアルは示している。

■修正履歴
記事に登場する佐原潤氏の所属を新しい部署名に変更しました。[2015/01/26 17:30]