「ポルシェ」というブランド名から想起するイメージといえば、やはり、「世界的なスポーツカーブランド」だろう。しかし、それがポルシェにとって、ブランディング上の課題にもなっていた。

 「ポルシェはエンジニアリングを中核としている。世の中の需要に合わせて、革新性の高い車両開発に取り組んでいる」とポルシェジャパンのマーケティング部志水弘樹シニアアソシエイトは説明する。同社は昨年、同社としては初のハイブリッドカー「パナメーラ S E-ハイブリッド」の国内販売を開始した。

 ところが、調査の結果、ポルシェのハイブリッドカーの認知は低く、「革新性」というブランドイメージは、他社に劣ることが分かった。「日本はスポーツカーブランドとしてのイメージがとりわけ強く根付いている」(志水氏)。

 そこで、ポルシェが持つ電気自動車(EV)向けの技術や、ハイブリッドカーの認知を広め、従来のスポーツカーブランドから、革新的なブランドであるとのイメージ転換を図るためのマーケティング施策に着手。昨年10~11月にかけてテレビCMなどのマス広告と、ネット広告を組み合わせたキャンペーンを実施した。予算の6割はネットに割く、デジタル重視のキャンペーンとした。

 特に力を入れたのが動画広告。テレビCMのクリエイティブをネットの動画広告にも使い、元々保有する様々な製品動画と組み合わせることで、広告接触者により多様な情報を伝えることを狙った。

 ディスプレイ広告のクリエイティブは、広告枠にマウスカーソルを合わせると広告の表示範囲が広がり、テレビCMと同様の動画広告が再生されるもの。右下の「詳細はこちら」の部分をクリックすると、動画再生が止まり、動画を覆うように他のコンテンツが表示される。閲覧できるコンテンツは大きく2つで、ハイブリッドカー3車種ごとの動画と、EVの技術のコンセプト動画だ。

ディスプレイ広告内で動画を再生した

配信先指定でブランド毀損を防ぐ

 この広告をネット広告配信会社オムニバス(東京都渋谷区)のオーディエンスデータを活用して輸入車に関心のある層、年収800万円以上の層、ゴルフに関心がある層などに向けて配信した。ブランド毀損を防ぐために、「東洋経済オンライン」「MSN Japan」など約100サイトを配信許可(ホワイト)リストに設定。加えて、「Yahoo!JAPAN」にも配信した。

 その結果、動画広告の接触者の約13%が広告内の別のコンテンツを閲覧するなど、非常に高い効果が得られた。さらに、広告から試乗会に誘導したところ、合計で174組が参加した。志水氏は「前代未聞の試乗者数だ」と驚きを隠さない。また、11月はEV向け技術の紹介ページが、ポルシェのサイト全体で最もアクセスを稼ぐなど、「数字上でも大きな手応えを得た」(志水氏)。

 こうした成功を受けて、今後は他の車種のキャンペーンなどにもデジタルマーケティングを積極的に取り入れていく方針だ。

この記事をいいね!する