日用品大手メーカー英レキットベンキーザーの日本法人、レキットベンキーザー・ジャパンは、ニキビケアブランド「クレアラシル」のマーケティング予算を100%デジタルに投下した(2014年10月号参照)。若者向けの商品ゆえ、テレビCMより動画広告などデジタルメディアの方が響くとの判断だった。その一方、同社がほかに展開する薬用石鹸「ミューズ」、フットケア製品「ドクター・ショール」などの日用品ブランドでは、変わらずテレビCMも出稿している。

 テレビCMとネット広告はどのようなバランスで出稿を考えたらよいのか。マーケティング本部デジタルメディアマネージャーの趙恩淳氏は、「効果の計算方法が違う両広告の単位を合わせて考えることが必要。CMと動画広告なら同じ土俵で比較しやすく、試してみた」と言う。

 CMの単位はGRP(延べ視聴率)。世帯視聴率とフリークエンシー(平均接触回数)の積で算出する。一方の動画広告は、再生回数などではなく、「比較のためターゲット層の個人延べ視聴率(TRP)を計算して検討している」(趙氏)。例えばF1層などターゲットのリーチ数とフリークエンシーを設定してインプレッションを出し、人口で割る。これをエリア単位で出して比較する。

 2013年夏頃から比較検証を重ねた結果、「費用対効果は動画広告の方が良い。ただ、YouTubeの視聴は東京など大都市中心で全国をカバーできない。動画広告をテレビCMの代わりに使うのはまだ無理と数字で把握できた」(趙氏)という。

 メディアプラン策定時にこの傾向を反映し、昨年4月から、YouTube向け動画広告のTrueViewは大都市に絞って出稿、テレビCMは地方を厚めに放映するなど、互いの長所と短所を補い合うようにした。

動画広告からECサイトへ飛ばす

 さらに同社では、YouTube動画広告に、テレビCMではできない工夫を加えて配信した。昨年12月に配信したミューズの動画広告は、テレビCMと同じ映像を使いながらミューズのロゴ画像を常時表示し、割引キャンペーン実施中のAmazon.co.jpの特設サイトにワンクリックで飛べるよう、リンクを張った。リンクの飛び先を複数指定してABテストを実施したところ、ミューズはAmazon.co.jp、着圧ソックスの「メディキュット」は自社公式サイトへのリンクが、最もクリック率が高かったからだ。もちろん飛んだ先のEC(電子商取引)サイトで簡単に購入には至らないが、そのユーザーは後日、リターゲティング広告で追跡する。

 「ユーザーが動画広告に接触した後の商品認知度や購買意欲は、テレビCMより良い数字が出ている」(趙氏)ため、今後も動画広告でテレビCMでは得られない効果を上げるように努めていく考えだ。

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