ソーシャルメディア公式アカウントの開設には当初慎重姿勢が目立った金融業界で、りそなホールディングスが攻勢をかけている。Facebook、LINE、Twitter、YouTubeのソーシャル主要4メディア全てにアカウントを開設している大手行はりそなのみだ。発信内容も、他行がCSR(企業の社会的責任)中心なのに対し、2013年7月に制定した自社キャラクター「りそにゃ」が登場するコミカルな内容が目立つ。

 同社は2011年3月の東日本大震災による計画停電で停止するATMの情報を適宜発信するためにTwitterを利用し始めたのを皮切りに、12年8月にFacebookページ、13年11月にYouTube公式チャンネル、14年7月に傘下のりそな、埼玉りそな、近畿大阪の3行それぞれでLINE@、そして14年12月にりそなグループとしてLINE公式アカウントを開設した。

 ソーシャルメディア強化の理由について同社コーポレートコミュニケーション部長の有明三樹子氏は「特に若者層の口座開設を増やすため」と説明する。メガバンク3行の事業主体がホールセール部門であるのに対し、りそなはリテールだ。しかしながら、メガバンクに引けを取らない支店数を全国に構えながらも、個人預金口座数はメガバンクの後塵を拝している。リサーチ会社に依頼して実施したメインバンク調査では、特に若者層を取り込めていないことが明らかになっていた。

 とはいえ同社は2003年に公的資金の注入を受けた身。3年前倒しで今年中にも完済する見通しではあるが、多額の広告宣伝費はかけられない。口座解約件数を上回る新規開設を獲得するため、みずほフィナンシャルグループはサッカー日本代表のサポーティングカンパニーに、三井住友銀行はプロ野球日本シリーズの特別協賛に名を連ね、有名女優を起用したテレビCMも放映する。そんな競合に互して予算を抑えながら新規口座を獲得するため、低コストの独自キャラクターを開発し、潜在顧客が利用するスマホに寄り添うことにした。

ベテラン行員に不評だった「りそにゃ」

 コーポレートカラーの緑を基調にしたゆるキャラ「りそにゃ」はやや釣り目で表情に乏しく、パッと見た目では愛らしいキャラクターではない。Google検索でも関連語に「かわいくない」が表示されるほど。社内で検討時にはベテラン行員に総じて不評だったという。だがこの媚びないキャラが俗に言う「じわじわくる」味わいを醸し出し、若年層ほど好反応を得たことで制定にこぎつけた。「若い人の会話に『りそな』はまず出てこないが『りそにゃ』なら可能。スマホでりそにゃを知り、店頭のりそにゃポスターを見て『あれだ』と思ってもらう。気になる存在になることが口座開設への第一歩」(有明氏)。

「りそにゃ」スタンプで巻き返しを図る

 2014年暮れに公開したLINEスタンプは、LINEアプリ内のスタンプショップを介さないダイレクトスタンプだったが、それでも友だち数は50万人を超えた。スタンプの期限が切れる今春以降、第2弾としてスタンプショップで提供するスポンサードスタンプを配信して一気に友だち数を増やす考えだ。

 一方、LINE@アカウントの友だち数は、りそな約8000人、埼玉りそな約3500人、近畿大阪約1000人と伸び悩んでいる。アカウントの存在を告知する場所が実店舗やWebサイトに限られるため、若者層の新規口座開拓には向かなかった。安価なため今後も各行のお知らせ配信メディアとして継続するが、軸足は公式アカウントに移していく。

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