アサヒビールは、消費者を目的の飲食店まで道案内するスマートフォン向けアプリ「misecoco(ミセココ)」の提供を始めた。最大の特徴は、競合他社の取引先である飲食店も、案内対象としていること。店への行き方を分かりやすく案内することで、飲食店の利用頻度を高め、外食産業の活性化につなげることを目的としている。アプリの提供開始は2014年12月11日で、2015年度中にダウンロード数10万件を目指す。

目的の飲食店まで道案内するスマートフォン向けアプリ「misecoco(ミセココ)」

 一般的にメーカーが提供するアプリは、提供する情報や機能が自社製品に寄ったものになりがちだ。しかし「それこそが、メーカーが出すアプリが流行しづらい理由だ」とmisecocoを担当する、アサヒビール経営企画本部デジタル戦略部の仲祐槻主任は指摘する。

 「特定の商品やサービスの熱心なファンなら話は別だが、そうでなければ、様々な商品やサービスの情報を網羅的に見られるアプリの方が利便性が高い」(仲氏)。そこで、より幅広い人に利用してもらうために、自社の取引先にこだわらず、あらゆる飲食店の情報を取り扱うことに決めた。

 アプリの提供元がアサヒビールがであることを、強く打ち出していないのも、利用者の層を広げるためだ。「会社名が表に出ると、その時点で、掲載されている店数が(アサヒビールの取引先に絞られて)少なそうだと判断されてしまう恐れがある」(仲氏)からだ。

 misecocoは、グーグルの持つ地図情報などを独自アプリに組み込める「Google Maps API」を利用して開発した。グーグルが情報を持つ約50万件の飲食店全てが対象で、飲食店名を入力すると、AR(拡張現実)によって、店の方向を指し示すなどして、道案内をしてくれる。

2軒目の検索機能で社内を説得

 競合相手の取引先をアプリで案内することに反対する意見も、社内には少なからずあったという。そうした意見にも配慮して用意したのが、現在地周辺の店舗を探す機能だ。こちらはアサヒビールの取引先のみが検索対象になる。「1次会が終わって、2軒目の店を選ぶ際などに使ってもらうことを想定した。こうした(自社の取引先のみを案内する機能も盛り込む)二段構えにすることで、社内の理解を得た」(仲氏)。

 アプリの告知では、新たな試みとして、動画広告を活用した。宴会に向かう途中で迷っている女性がアプリの力を借りて到着するものなど、全部で4種類の動画を制作した。「動画できちんと機能や利便性を説明してから、ダウンロードした人は、継続的に利用するユーザーになりやすいのではという仮説を検証するために活用した」と仲氏は説明する。

 この動画を、ソフトバンクモバイルが顧客に配信するメールに動画を掲載できる広告メニューを活用して、20代の男女を中心に約30万人に配信した。スマートフォン利用者の手元に直接動画広告を届けることで、閲覧後にそのままダウンロードしてもらうことを狙った。また、今後は動画広告ネットワークなども通じて広く配信していく。

 こうして、動画広告を配信した上で、ダウンロード件数のほか、DAU(日別の利用者数)やMAU(月間利用者数)を重視する指標にして効果を検証する。将来的には、飲食店の予約機能なども視野に入れてアプリの利便性を高めていく。

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