アベノミクス効果などで業績回復を果たす企業が出始めているが、一部を除き復活の手がかりをつかめずにいるのが飲食業界各社だ。そうした状況ながらこのほど導入したデジタルマーケティング施策によって、この年末年始に大幅な来店客増を見込んでいる会社がある。「和民」「わたみん家」などの居酒屋チェーンを展開するワタミフードサービス(東京都大田区)である。

同社はロイヤリティマーケティング(東京都渋谷区)が提供する共通ポイントサービス「Ponta」を11月、「和民」など6ブランド全国609店舗に導入した。現在サービス開始記念として専用サイトからワタミの会員制度に登録すると、通常は飲食代金の1%のPontaポイントを2倍付与するキャンペーンを実施している(2014年10月末まで)。
取り組みを主導したマーケティング部の平澤克教部長は「Pontaの導入を契機に顧客を当社店舗に囲い込み、来店促進につなげていく」と意気軒昂だ。
来店効果が見込める理由とは
このPontaや「Tポイント」といった共通ポイントを導入する企業は年々増加。今や当然の施策になりつつある。よほどのボーナスポイントを提供しない限り、もはや来店効果は見込めないのでは…。
こう考える多くの企業はポイントサービス活用の目的をポイント付与による「来店促進」から、会員属性や購買履歴の把握による「データ分析」へとシフトさせている。それでもワタミフードサービスは、来店客の増加の効果を上げる目算があるという。それは一体どのようなものなのか。
一言で言えば他の業態ではありえないほどの“ポイントの一気貯め”を同社なら提供できるということだ。すれば、合計料金は10万円。支払う幹事がPontaカードを精算時にレジで提示すれば、幹事のPontaカードには一気に2000Pontaポイントが貯まる(2%付与の場合)。通常の還元率の1%で2000Pontaポイントを獲得するには20万円分の購入が必要だ。コンビニエンスストアやファストフードの利用ではまず不可能な、大量のポイント獲得の機会になるというわけだ。
多くの場合、宴会場所を選ぶのは幹事の役割である。「幹事にとって(ポイントの一気貯めが期待できることは)当社の店舗を選ぶ強力なインセンティブとなるはずだ」と平澤氏は言う。
実際同社はPontaポイント導入と軌を一にして幹事を狙い撃ちにしたキャンペーンを実施した。12月に開く宴会コースを11月末までに早期予約すると、予約した人に3000Pontaポイントを付与するもので、予約獲得に一定の効果があったという。歓送迎会が多い3~4月などにも幹事をターゲットにしたキャンペーンを実施すれば大きな効果を期待できるだろう。
もちろん今後はPontaを利用したデータ分析にも取り組む。実は同社はPonta本格導入前に神奈川県限定でカスタマイズ型メールの配信実験をしている。2014年にはデータ分析の面でもPonta活用をさらに進めていく方針だ。