サッポロホールディングスは11月28日、同社EC事業の統合プラットフォームとなる「サッポログループネットショップ」を開設した。同サイトの下に、グループで展開しているEC(電子商取引)サイトを統合して、モール型ECとして順次展開。EC事業に本腰を入れていく方針だ。
第一弾として、オリジナルデザインのビールをオーダーメードで作れるサッポロビールのECサイト「わくわくブルワリー」と、ポッカサッポロフード&ビバレッジのECサイト「ぽっかぽっかくらぶ」を統合した。これまでは個別に会員登録などをする必要があったが、サイト統合に伴って、会員IDとポイントを共通化した。
今後も、サッポログループである恵比寿ワインマートのワイン販売ECや、飲食チェーン「銀座ライオン」を展開するサッポロライオンの商品販売ECを順次統合していく。2014年度で売上高2億円、2016年度には売上高13億円を目指す。

「酒類はテレビCMを放送できる時間が自主規制で短縮傾向にある。例えば、休日のCM放送の自粛時間が2010年に、午前5時から午後6時までに延長されている。宣伝の主戦場だったテレビCMでプロモーションをできる時間が限られつつあるからこそ、直接顧客とつながることが一層重要になる」。営業本部企画推進部の大谷光弘部長はEC強化の狙いをこう語る。
消費者とのつながり、という面においてサッポロビールはEC事業の本格化に先駆けて、ソーシャルメディアを活用して消費者とビールを共創する企画「百人ビールラボ」を実施してきた。第1回の商品は、発売から約2週間で完売。この成功を受けて、第2回を実施して、12月中旬から、自社ECサイトで「百人のキセキ~魅惑の黄金エール~」の予約販売を始める。ソーシャルメディア施策を通じて、これまでメーカーとしはて弱かった、消費者と直にコミュケーションをする知見をためてきた。
「ECサイトではこの経験をすべて注ぎ込む」と、営業本部企画推進部デジタルマーケティング室鈴木雄一シニアマネージャーは意気込む。例えば、テストマーケティングに活用する。一般販売に先駆けて、自社ECサイトで商品を販売する。購入者から意見を集めて味やパッケージなどを見直して商品を完成させる。2014年はそんな手法に取り組んでいくという。
品揃えに大きな課題
ただし、課題も多い。サイト上の品揃えが限られていることもその1つだ。現時点で、ポッカはカップスープから清涼飲料水まで、多様な商品を販売しているが、サッポロビールはオーダーメードビールのほかは、昨年発売したビール系飲料「サッポロ 北海道PREMIUM」のみだ。EC開設に向けて、「黒ラベル」や「エビスビール」といった主力商品を含めて、すべての商品を販売する計画を立て、商品データベースも整えた。価格面では既存流通より高かったとしても、サッポロビールの商品をすべてネットで買えるということが、顧客にとっての価値となると考えたからだ。
しかし、「既存流通を担当する営業部門からの猛反対にあった。ECサイトの開設直前まで、議論を続けたものの、実現には至らなかった」と大谷氏は肩を落とす。
とは言え、ビール関連商品が少ないのはビールメーカーのECとしては、少々寂しい。そこで、まずは一般流通での市場カバー率が2~3割程度となった商品を順次販売していくことで、営業部門と折り合いを付けた。サッポロ 北海道PREMIUMはその第1弾という位置付けだ。「飲みたいけど、どこで売っているか分からない。そうした問い合わせをもらうようなロングテール商品から順次拡充していく」(大谷氏)。
今後はデータを活用したマーケティングにも取り組む。サッポロビールは、ECサイトの統合により、1つの会員IDに対して様々な購買情報を持てるようになる。そこで、近いうちにDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を導入する。そうして、購買データやサイトの閲覧履歴といった顧客データを活用したデジタルマーケティングを推進していく。
記事掲載当初、「2015年度には売上高13億円を目指す」としていましたが、2016年度の誤りでした。本文は修正済みです。[2013/12/12 18:45]