「モスバーガー」を展開するモスフードサービスは2014年4月をメドに、顧客の属性や購買履歴に基づいてカスタマイズしたスマートフォン向けのメルマガやクーポンなどの配信を開始する。
「MOS CARD(モスカード)」という繰り返し入金して利用できるリチャージ式プリペイドカードと、自社のモバイル会員サイト「モスバーガー モバイル」を連携させることで会員である消費者の属性情報や購買履歴などを把握。会員が住んでいる地域やよく購入する商品といったデータの分析結果に基づいてメルマガに記載する文章や提案する商品を変えるカスタマイズを実現していく。

この新しい施策の狙いについてモスフードサービスマーケティング室販売促進グループの真鍋貴裕リーダーは次のように語る。
「モスの商品は好きだけれど普段よく行くのはマック(マクドナルド)。そんな消費者が残念ながら少なくないことが当社の調査によって分かっている。では(マクドナルドに流れた)消費者にどうすれば当社の店舗へ足を運んでもらえるか。それを考えた結果、この施策にたどり着いた」
属性や購買履歴などのデータ分析の結果に応じて、発信する情報をカスタマイズする。こうしたマーケティング施策は今、多くの企業が関心を寄せる旬なテーマの1つだ。飲食系チェーンではスターバックスコーヒージャパンが同様の取り組みを2013年6月に始めている。ただ、本格的な展開に踏み切った例は少ない。
特に競争が激しいハンバーガーチェーンでは価格を引き下げて目玉商品としたり、スマートフォン向けアプリで割引クーポンを配布したりといった、即効性のありそうな販促策に走る企業が少なくない。そうした事情もデータ分析によるカスタマイズが広がりにくい要因の1つになっているのかもしれない。それだけに、割引策などより“迂遠”にも見えるモスフードの新施策の行方には、業界の内外から注目が集まりそうだ。
地域区切ったテスト配信では「一定の手応え」も
既にモスフードは10月から、この新施策を実現する準備として、あるキャンペーンを始めた。モスカードを利用する消費者が同カードの情報をモバイル会員サイトの「モスカード登録ページ」から登録すると、抽選で毎月1000人に500円分のポイントを付与するというものだ。2014年3月31日までの期間中に10万人に登録してもらうことを目標に掲げる。
同社のモスバーガー モバイルで会員登録している人は約230万人。モスカードの発行枚数も、2012年4月の導入から1年半ほどで80万枚を超えている。こうした数字と比較すると10万人という目標はいかにも控えめに映る。が、同社は第一段階として、この目標達成に注力するという。
モスカードについては現在、3000円以上をチャージ(入金)すると金額の2%相当のポイントを付与するキャンペーンを実施している(1ポイントは1円相当)。「時期にもよるが、店頭での支払いのうち、5~10%程度使われている」(広報IRグループの角田泰子氏)。確かに現金払いより便利でお得だが、同カードは当然ながら同社の店舗でしか使えない。そんなモスカードを利用する消費者は、自宅近くにモスバーガー店舗があるなど、一定頻度でモスバーガーを利用する優良顧客が中心になる。
そうした人の中で、モスカード情報の登録までしてくれるのは、さらにコアな同社ファンである可能性が高い。まずは熱心な自社ファン層に向けてカスタマイズしたメルガマを配信することで、その反応や来店頻度が実際にどれほど向上するかなどを確かめたい、というわけである。
実は既に同社は、関東圏の10店舗から直接、消費者にカスタマイズしたメールを送る実験を実施している。「地域や店舗、送付数もごく限られたテストだが、(顧客の来店頻度が高まることに関して)一定の手応えは感じている」(真鍋氏)という。今後はさらにカスタマイズの具体的な方法などについて検討を重ね、来年4月の本格開始に向けて万全を期す考えだ。