流通グループ大手ベイシアグループの中核企業であるホームセンターのカインズ(埼玉県本庄市)が、EC(電子商取引)に本腰を入れ始めた。今年2月にアマゾンに出店したのに続き、10月には楽天市場にDIY専門ストアをオープン。そして今、自社ECサイト「カインズホームオンライン」のテコ入れに着手している。

 自社ECの開設は2006年。テレビCMや新聞広告に「ネットでもご購入いただけます。くわしくは『カインズ』【検索】」という告知を入れるなどして新規客を呼び込み、現在5万人に上る会員にメルマガを送ってリピートしてもらうことで成長はしてきた。ただしその規模はまだ小さい。全国24都道府県下に187の実店舗(7月末時点)を構え、年商が3400億円を超える同社において、現状のECは中堅クラスの1店舗レベル。売り上げ比率では全体の1%に満たない。

メルマガからのリピート購入促進を目指す「カインズホームオンライン」

 一方、主要ホームセンターの既存店売上高は、横ばいから微減の傾向にある。大規模小売店舗立地法の制約や出店コストの問題から都心部には進出しづらく、郊外も大規模店を出店する余地が限られてきているため、新店舗を急激に増やせる環境にはない。

 同社も例外ではないが、同社ECの購入客は、店舗網が手薄な東京、神奈川の居住者が一定割合を占めていたため、一躍「有望店舗」「強化指定店舗」として俎上(そじょう)に載せられることになった。

 最初に取り組んだのは現状の可視化だ。これまでは商品の入れ替え・追加とメルマガの配信がルーチンワーク化していて、反響に応じて改善するPDCAサイクルを回しているとは言い難い面があった。そこでシナジーマーケティングのCRMツール「Synergy!360」を導入して顧客の行動履歴を収集・蓄積。「メールのクリック率からコンバージョン率、特集ページの閲覧状況やそこからの購入動向などを把握し、改善ポイントを明確にした」(カインズeコマース事業推進部の坂田雅宏部長)。

アンケートで顧客のタイプを把握

 続いて取り組んだのが顧客タイプの把握。顧客に響くメールを作成するため、Synergy!360搭載の価値観アンケート機能「体験版ソシエタス」を利用して、ECの顧客タイプを分類した。アクティブか受け身か、家庭的か自己中心的かなどを設問への回答によって割り振るもので、例えばアクティブかつ家庭的な側面が強い人は「家族想いの多忙ワーカータイプ」と分類される。

 分類は全部で12タイプあるが、同社顧客の多くは、そのうち4つのタイプに多く属していた。DIY用品やアウトドア用品が主力のホームセンターを利用する男性客は、家庭的かつアクティブとイメージしがちだが、アンケート結果ではやや受け身な個人主義者も相当数いた。その購入傾向を追うと、同社のプライベートブランド(PB)ビールをまとめ買いしていたりする、という。

 こうした傾向を踏まえ、現在まずメルマガの男女別配信に取り組んでいる。男性限定、女性限定、男女混合の3タイプのメルマガを用意し、冒頭で紹介する商品のみ入れ替える。10月第2週の週末、男性向けメールにPBビール「黄金(こがね)」、女性向けメールに収納用品「キャリコ」、男女混合メールに「軽い掛ふとん」の情報を件名と冒頭に配置したところ、メールのクリック率は一斉配信していた当時より平均で3ポイントほど向上。また、女性向けメールからの購買金額・件数が一番多い結果になった。今後はさらに4タイプの価値観に応じたメルマガ配信をすることで、効果を検証する考えだ。

 ディスカウントストアのイメージが強いホームセンターだが、昨今はPBを強化している。カインズではPB比率が4割に上り、商品の企画・製造から販売までを担うSPA(製造小売り)型企業に移行しつつある。来春をメドに、実店舗で利用できるカインズカード会員とポイント制度をECでも利用できるよう統合し、顧客がどちらで購入しても把握できる体制を整える予定だ。

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