2015年春に卒業する大学3年生の就職・採用活動が12月1日、解禁された。1日0時に「マイナビ」「リクナビ」など就職情報サイトにアクセスが殺到してつながりにくくなったのも、もはやこのシーズン特有の風物詩といった感がある。
では、企業各社が運営する採用Facebookページは盛り上がっているのか。Webマーケティング支援のユーザーローカル(東京都目黒区)が昨年の就活解禁時にリリースしたソーシャル就職人気企業ランキング上位10社のうち、昨年分の投稿を削除した企業や、採用を主事業とするリクルートグループ企業を除いた4社について、解禁直前の11月の動向を昨年と比べてみた。

注目したいのは、投稿に対する「いいね!」の数だ(シェア数、コメント数も合算)。ニトリ、三井住友海上火災保険は投稿本数を大幅に増やしたにもかかわらず、いいね!の合計は昨年を下回っている。1投稿当たりの平均いいね!数を算出すると、三井住友海上が昨年182件から今年104件、ニトリも昨年100件から45件と激減していることがわかる。投稿数を絞ったP&Gも、昨年81件から今年51件へと同様に減らしている。
2012年の「新語・流行語大賞」にもノミネートされて注目が集まった“ソー活”だが、上記のデータからは定着というより停滞ないしは退潮に向かっている印象すら受ける。
なぜソー活は盛り上がりに欠けてしまっているのか。アベノミクス効果による企業の採用意欲の回復で学生側がややのんびりとしている面もあろう。ただしその根本には、ソーシャルメディアを取り巻く環境の変化がありそうだ。
就活学生の視点から考えると、ソー活勃興期の学生は就活目的で自身のFacebookアカウントを取得したため、採用にプラスになる投稿内容を考えて“ソーシャル武装”することが可能だった。しかし今回就活を迎えるのは、震災直後の2011年4月に入学した世代で、プライベートで当たり前のようにソーシャルを利用してきた。採用担当者は求職者のアカウントをチェックしていると言われる昨今、遊びの内容も多分に含むアカウントで採用Facebookページに「いいね!」を押しにいってよいものか、迷いが生じるだろう。マクロミルが2013年2月に当時の就活生300人に実施したアンケート調査では、SNSのプロフィール公開や発言で企業の目を「意識する」という回答が70%を超えていた。
一方、企業側としては当初、ソーシャル上で情報発信することで、高額なマイナビやリクナビを使わずに、しかも優秀な学生を採用できるのではないかという期待感があった。実際、カヤック(神奈川県鎌倉市)やアイティメディアなどは2010年前後、ソーシャル採用を実施して成功させている。しかし、ソーシャルの普及が急速だったこともあり、利用者イコール情報感度・リテラシーの高い学生という図式は早々に崩れた。
企業、学生双方の使い方にも問題がある。企業側は、ソー活に過度な期待はしなくなった影響か、投稿内容は自社採用サイトやリクナビなどのサイトで公開した記事の転載、更新のお知らせが中心で、Facebook“限定”、Facebook“ならでは”の取り組みにあまりお目にかかれない。学生側も受身の姿勢が多く、前述のマクロミルの調査でも、ソー活を行う理由として「企業へ自己PRする場として」「OB訪問や人脈形成のため」を挙げている人はともに8.8%と少数派だ。
良くも悪くも公私混同型のFacebookを使ったソー活は難しい面がある。公的な自分を魅せる「LinkedIn」のようなSNSは普及の余地があるのかもしれない。