「コーポレートカラーが黄緑色の元気な会社」といえば、デジタルマーケティング業界ではLINEあたりが思い浮かぶだろうか。他業界にも注目の企業がある。ミドリムシを活用した健康食品や化粧品を製造・販売する東大発のバイオベンチャー、ユーグレナだ。特にこの1~2年、頻繁にメディアで取り上げられ、急速にその認知度と売り上げを伸ばしている。

 昨年暮れに東証マザーズに上場した急成長中の注目株だが、2013年9月期の売上高は20億円規模。潤沢な広告宣伝予算があるわけではない。それでもテレビ、新聞、雑誌からWebニュースまでメディア掲載が途切れないのは、同社の出雲充社長が会社の顔として積極的に取材を受けていること、そして広報がニュースリリースや自社サイト内の広報ブログを通じて情報を発信し続けていることが大きい。

 ミドリムシと同社について簡単に説明しておこう。ミドリムシは藻の一種で、二酸化炭素(CO2)を取り込んで光合成を行う植物の側面と、鞭毛(べんもう)で動き回る動物の側面を併せ持つ体長わずか0.05mmの単細胞生物。ビタミン、ミネラル、必須アミノ酸、不飽和脂肪酸など59種類の栄養素を持つ。同社はその大量培養に成功し、事業を軌道に乗せた。

 だが同社の目標は健食通販の成長では終わらない。ミドリムシが細胞内に蓄積する油脂分は高品質のバイオ燃料としても注目され、2018年までに航空機のジェット燃料として実用化にメドを立てるべく研究開発に取り組んでいる。食料不足、エネルギー不足、CO2増加という地球レベルの問題を一気に解決する可能性を秘めていることから、「ミドリムシで地球を救う」を理念に掲げている。

 これを「夢のある話だから取材がくるのだろう」で片付けていては学びが得られない。同社もかつては広報戦略で迷いを抱えていた。ミドリムシという名前がその語感からどうしても「虫」を想起させるため、食品には向かないと考え、当初は和名のミドリムシを隠して、学名をそのまま社名にしたユーグレナで通そうとしていた。

 だがユーグレナを知ったお客がネットで検索すれば、「和名:ミドリムシ」であることはすぐ調べられ、「虫だったのか」「騙された」と誤解が広がっていきかねない。そこで発想を転換し、「ミドリムシって何? 虫?」という疑問を基点にしたコミュニケーション戦略に切り替えた。

2013年の主なメディア掲載(10月まで)

 そうすることでまず健康食品マニア層の間で話題に上り、テレビなどの情報コーナーで取り上げられるようになった。そして健食ビジネスだけで終わらない壮大な理念とプランがビジネス誌など硬派メディアの目に留まり、ミドリムシ入りラーメンからバイオ燃料の開発状況まで幅広い記事がメディアに躍るようになった。

大事なのは“動いている感”

 ミドリムシの正しい理解と自社の理念を伝えるべく、発信業務に努めているのが同社経営戦略部広報・IR担当チームリーダーの安間美央氏。月によってバラツキはあるもののニュースリリースは平均して月2本ペース、広報ブログは週1~3本ペースで発信し続けている。「現状、売り上げのほとんどは健康食品だが、商品・研究開発・IRの3本柱をバランスよくお伝えするようにしている。“動いている感”を伝えることで、健食のファンから企業のファンを増やしていきたい」(安間氏)。

 バイオ燃料などの研究開発はすぐに結果が出るものではないだけに、特許出願や研究成果の学会誌掲載など進捗を積極的に公表していくことで、ステークホルダーは理解し安心感を持つ。情報発信は取材を呼び込み、記事化された頃にまた新たなニュースを発信していることで次の取材が舞い込む。

 こうしてメディア露出が恒常化すると、興味を持ったネットユーザーがソーシャルメディア上で“わがミドリムシ摂取体験”を投稿し、仲間内で共有・拡散される。そしてミドリムシの認知度が向上し、「機会があれば試してみたい」と興味を持つ人がさらに増える。

 そのタイミングで発売されたのが、ミドリムシ配合ヨーグルト「ユーグレナ&ヨーグルト」だ。10月15日から全国のファミリーマートなどで販売され、近所で安価に入手・摂取できる初の機会となったことからたちまち品薄となった。販売を一時停止し、12月3日から再販できるよう増産しているという。ミドリムシが市民権を得た現象と言えるかもしれない。

 エッジの利いたユニークな企業ではあるが、安間氏の発信スタイルは、広報力でメディア露出を増やし、認知度を高めていく一つの手本になりそうだ。

日々“動いていること”を発信し続け、認知度とEC購入者を伸ばしたユーグレナ