家電などのリサイクル商品の買い取り・販売チェーンであるハードオフ コーポレーションは10月、EC(電子商取引)サイト「ハードオフネットモール」を開設して、EC事業に乗り出した。EC事業を開始する上では、リサイクル品を扱い、かつフランチャイズ(FC)店が中心ゆえの課題が山積みだった。この課題を解決して、EC事業を実現可能にしたのは、自社で抱える3人のシステム開発者だった。

 ハードオフは従来、販売以上に買い取りに力を入れてきた。その理由について山本太郎常務取締役は、「これまでの知見から、買い取った商品は適正な値段をつければ、99%売れることが分かっていた。買い取りをして商品さえあれば売れる。それが常識だった」と説明する。にもかかわらず、ECサイトを展開して販売の強化を始めたのは、高額商品を中心に売れ行きが鈍り始めたからだ。

 特に顕著なのが、高額なオーディオ機器だという。一定期間で売れなかった商品の値引きもしたが、それでも売れないものが出始めている。「そもそもオーディオ機器のニーズが減少しているが、加えて店舗の商圏に住んでいる顧客のニーズと、商品のマッチングがしづらくなっている」と山本氏は分析する。一方、ネットを使えば、全国に住むオーディオ機器好きを対象に販売できる。こうしたことから高額商品を中心に、ネットを通じて広く販売するためにEC事業の展開を決めた。

ハードオフのECサイトでは、各店舗が商品を発送する

 ECサイトに掲載している商品は、店頭でも販売しているものが大半を占める。そのため、ECサイトで受注した場合、購入した顧客宛に各店舗から直接、商品を発送している。ここに大きな課題があった。リサイクル品の多くは一点ものの商品だけに、ECサイトから注文が入っても気がつかず、その商品を店頭で売ってしまったりすると、顧客満足度と自社への信頼が大きく低下しかねない。

店舗連携に大きな課題

 だが、通常の店舗オペレーションに加えて、慣れない通販対応を課すと店舗での作業が複雑になり、対応しきれない恐れがあった。また、ハードオフの店舗の多くはFC店だ。そのため、本社主導でシステムを一括導入することも難しかった。EC事業の展開には、店舗負担を限りなく減らし、FC店のオーナーから理解を得て、かつECサイトからの注文への対応に漏れが生じないようにすることが必要だった。

 この難題に挑み、見事解決したのがハードオフが抱える3人のシステム開発者だった。通常なら、EC向けなどのシステムをカスタマイズする際は、実装する機能などを決めた上で、開発会社に依頼するケースが多いだろう。しかし、実際の店舗の実情を知らないで作り上げたシステムは、それを利用する店舗の間で大きなズレが生じる可能性もある。

 そこでハードオフは、システムの設計図に当たるソースコードを開示していて、ハードオフが自由にカスタマイズできることから、EC構築支援のエスキュービズム(東京都港区)のEC構築ソフト「EC-Orange ショップ」を採用。実店舗で店長を務めた経験を持つシステム開発者がカスタマイズした。

 例えば、ECサイトへの商品情報の掲載を簡単にした。店舗が商品を販売する際は、POS(販売時点情報管理)システムに商品情報を登録する。その際、写真を同時に登録し、ECサイトに掲載する設定をするだけで、自動的にネット販売も始まるようにした。

 また、ECサイトから注文が入ったことを知らせるディスプレイを店内に設置。注文情報を一覧表示するだけでなく、注文が入ったときは、その通知を大きく表示する仕組みも開発した。

 こうした仕組みを開発することで、フランチャイズ店を説得していった。山本氏は、「店舗の実務をよく理解しているシステム開発者がいたからこそ、自社の事業に最適なシステムを構築できた」と語る。経営におけるネット活用の重要性は一層増している。ネットを柔軟に活用したいなら、システム開発者を自社内に置くことを検討してみてはいかがだろうか。

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