日本電気(NEC)は10月から自社の企業向けWebページと、約70万人が登録するビジネスパーソン向け情報サイト「WISDOM」への訪問者の横断的な分析を始めた。CRM本部Webコミュニケーショングループの田中滋子シニアマネージャーは、「ドメインを横断した、Web上の顧客の行動履歴データを解析して、ターゲティングメールの配信やレコメンドといったマーケティングに取り組んでいく」と意気込む。

一般的にBtoB(企業間取引)製品は、検討開始から受注が決まるまでに数週間から数カ月程度かかるなど、BtoC製品よりも検討期間が長い。そのため、法人向けのパソコンやサーバー、通信機器といった製品を、自社Webサイト経由で受注したり、電話やファクシミリなどで、NECの営業担当者やコールセンターで見積もりを依頼されたり、受注したりするまでに、どのページを見たり、サイト上でどのような行動をしたか、といった“経路の情報”(コンバージョンパス)を把握することが、BtoC事業よりも、さらに重要になる。
しかし、NECでは従来、問い合わせや発注の直前にどのページを見ていたか、どの検索キーワードを使っていたか、といったデータしか見ておらず、コンバージョンパスを正確に把握できていなかったという。
また、WISDOMは、NECの企業サイトとはドメインが異なる。このため、両者をまたぐ分析も、できていなかった。
WISDOMは、顧客企業がNECの製品を検討する前段階からつながりを作り、サイトの閲覧を通じて、NEC製品の認知を高めること狙って開設したサイトだ。ビジネスに関連する情報や、資料作成に役立つ素材集といったコンテンツを用意して会員を集めてきた。
今年の3月には、7年ぶりにサイトを刷新。「つなぐ。つながる。」という新たなコンセプトを加えて、リアルのイベントを積極的に開催したり、サイト上にコミュニティー機能を加えたりすることで会員同士の交流を目指している。
また、コンテンツのカテゴリーに「ライフ・カルチャー」といった項目を加えるなどして、20~30代も含めて、より幅広い会員獲得を目指している。
WISDOMと企業サイトのデータを連携
WISDOMの会員数は約70万人。会員の中にはプレゼントに応募したりWISDOMが主催するセミナーに参加したりするために、勤務先や職種、役職区分といった情報を登録している人もいる。
会員には週3回メールを配信。WISDOMの更新状況に加えて、NECの製品情報や導入事例も載せて製品の認知を狙っている。
このWISDOMの会員データや閲覧履歴、メールに対する反応データとNECの企業サイトの利用動向をひも付けて分析できれば、どのような業種の、どういった役職の人が、WISDOMのどんなコンテンツを見て、NECの製品に関心を持ち、企業サイトを閲覧したかといった、マーケティングデータを手に入れられると期待した。
そこで、アドビ システムズの解析ツール「Adobe Analytics」と「Adobe Discover」をWISDOMと企業サイトの両方に導入した。これにより、WISDOMの会員データとNECのサイト閲覧履歴から、会員単位でデータが分析できるようになった。すでに分析にも取り組み始めているという。
今後は取得したデータをマーケティングに生かしていく。例えば、WISDOMの会員がNECのサイトで製品について問い合わせをした場合に、WISDOMで閲覧したコンテンツや、NECのサイトを訪れた経路などを分析。ほかの会員へのターゲティングメールの配信に生かすといった手法に取り組む方針だ。