「販売量が多くて、顧客層に特徴がある流通企業と協力して、それぞれの顧客層に合った商品開発を強化していく」。カゴメコンシューマー事業本部マーケティング部ギフトグループの勝丸透氏は、そんな戦略を推し進めている真っ最中だと明かす。

カゴメは「新たな需要の創造」を経営の重点戦略の1つとして掲げる。「従来のマス向けの商品や、コンビニエンスストア、スーパーといった既存流通チャネルだけでは獲得しづらい顧客層がいる。そこで、そうした層を顧客として多く持っている企業と協力して、新商品を開発することで、新たな需要を創出することを期待している」(勝丸氏)。既に様々な企業と商品開発の交渉を進めているという。
この新戦略の第一弾として、9月25日に販売を開始したのが、トマトジュース「カゴメ プレミアムレッド」(1本当たり168円)だ。アマゾンジャパンとの共同開発品であり、購入できるのはAmazon.co.jp内だけである。
Amazonでカゴメを買うのは男性
Amazon.co.jpを利用する顧客層は多様だが、カゴメの調査により、「既存流通で当社製品をよく購入しているのは主婦層だが、Amazon.co.jpでは所得の多い男性客が多い」(勝丸氏)ことが分かった。
同サイトの販売商品の中で、男性客からの支持が特に厚いトマトジュースが「百年品質」だ。これは毎年夏に収穫したトマトだけを使って作り、8~9月に販売する限定品である。カゴメの通常商品に比べて価格が2倍近いプレミアム商品という位置付けだ。
こんな高額商品でもAmazon.co.jpなら売れる。しかし百年品質は限定品で、年間を通しては販売できない。そこで、両社で顧客層に合った通年販売の商品を共同開発することを決めた。
開発に当たっては、Amazon.co.jpでカゴメ商品の購入経験があるユーザーの、同サイト内の閲覧履歴や購買履歴、検索動向などのデータ提供を受けて、参考にした。こうして生まれたのがカゴメ プレミアムレッドだ。濃縮還元のトマトジュースであり、栄養素の含有量が通常の商品の2倍といった特徴がある。
プレミアムとうたうだけに、価格はこちらも、通常商品のおよそ2倍だ。
販売開始に当たっては、過去に百年品質を購入したことのある人にターゲットを絞ってメールを配信するなどして、告知した。発売からまだ間もないが、「売り上げは順調に推移している」と勝丸氏は手応えを感じている。
10月7日からはAmazon.co.jp上での広告配信を本格化させている。「広告配信が本格的に始まったので、これからさらに売れ行きは伸びるはず」(勝丸氏)と意気込む。
アマゾンとカゴメは購入者の属性や他の購入商品といった情報を共有して、今後の共同商品の開発に生かす。
カゴメは今後、こうした取り組みをネットとリアル店舗の違いを問わず、広く進める方針だ。例えば、赤ちゃん向け商品を販売する企業と組んで、赤ちゃんがいる母親向けの商品を開発する。そんなことも構想としてはある。
「競合に対抗するのではなく、先陣を切って新たな需要を創造していく」(勝丸氏)。カゴメはそこに、成長の芽を見出している。