この夏のいわゆる“バカッター”騒ぎで、アルバイトを含む従業員の私的なSNS利用が企業リスクに直結することを、企業の総務、人事、危機管理部門の担当者は改めて実感しただろう。実際にトラブルが起きてしまった企業では、再発防止のための周知徹底が図られた。

 ファミリーマートでは、「来店客の個人情報」「販売個数や利益率など売り上げに関する数字」など投稿すべきでない具体的な内容や注意点などを1枚にまとめた用紙を作成。7~8店を管轄するスーパーバイザーを通じて各店舗オーナーに渡し、夜勤アルバイトを含む店舗スタッフ全員がそれを読んでサインをした。同様にローソンも、SNSリスクについてイラスト入りで分かりやすく説明したペーパーを全従業者に配布したという。両社の国内店舗数はそれぞれ約1万店規模。一店舗当たりスタッフ数が15人とすると、その数総勢15万人にも上る。アルバイトの入れ替わりも激しい。雇用契約時と定期的な周知が重要になりそうだ。

 これまで個人発のSNSトラブルといえば、その多くが暴言・放言の類だった印象が強い。ところがこの夏の数々の炎上劇は、写真が不適切な行為の動かぬ証拠として引き金になっている。これは“スマホシフト”が影響していそうだ。

 1年半ほど前に公開された調査結果ではあるが、IMJモバイル(現在はアイ・エム・ジェイが吸収)が実施した「スマートフォンユーザーの写真投稿に関する調査」(調査リリースPDF)によると、従来型の携帯電話からの買い替えによって写真を撮影する頻度が「増えた」「やや増えた」の合計がが55.7%、撮影した写真をWebサービスにアップロードする頻度も「増えた」「やや増えた」で合計64.4%に上っている。

 撮影・投稿機会が増えれば、それだけリスクも高まる。撮影した写真を閲覧している時に表れる「共有」アイコンをクリックすれば、Twitter、Facebook、LINE、メールなどのアイコンが表れ、投稿先を簡単に選択できる。クローズドなサービスのLINEと公開型のTwitterでは、外部からの見え方は全く異なるのに、投稿画面上ではその差を意識しづらい。かくして「このイタズラ写真はTwitterでつながってるA君に見せたらウケそうだ」とTwitterを選んだが最後、取り返しのつかないことになる。指導に当たる人は、こうした利用実態を踏まえて説明する必要があるだろう。

 もう一点、「炎上さえ防げればそれでよいのか?」という問題もある。

 「バイト忙しすぎ。今日はヒマだと思ったのに」──。

 自社が運営している店舗で、スタッフがSNSにこんな書き込みをしている可能性は十分にある。本人は匿名のつもりでも、過去ツイートを見ると店舗の制服姿で写っている写真があるかもしれない。炎上することはなさそうでも、第三者である客として見ればあまりいい印象は持てない投稿だ。

 「不適切な投稿をしないように」と改めて従業員に釘を刺した企業は少なくないが、では「何が不適切に当たるのか」を現場のアルバイト従業員が理解できるレベルで明示した企業はごく少数だろう。こうした業務に関する不平ツイートは、リテラシー教育以前に、現場の雰囲気や風通しの善し悪しに左右される面もある。店長など現場リーダー格の気配りや人心掌握力が問われるところでもある。通り一遍のガイドラインを用意しただけでは終わらないのがSNSリスク対策の難しさだ。