どの商品がお気に入りかだけでなく、どんな商品が嫌いかまでを収集する――。カタログ通販事業のフェリシモは、8月に開設したスマートフォン専用ファッションEC(電子商取引)サイト「スキマル」で、ユニークなマーケティング施策に取り組んでいる。
スキマルは20~30代などの若年層を利用者に想定。電車での移動時間や昼休みといったわずかな隙間時間でも、直感的にすぐ商品を選べ、買い物を楽しんでもらえることをコンセプトとする。
新たな施策を始めた背景には、「若者のカタログ離れ」がある。業界全体が直面するこの問題は、フェリシモにとっても他人ごとではない。カタログの配布において重要なチャネルだった書店が減少しており、従来型のビジネスモデルでは、若年層にフェリシモの通販事業を知ってもらうことすら、難しくなりつつある。
そこで、若年層との新たなタッチポイントとしてスマートフォンに着目。スキマルを立ち上げた。意識したのは操作性や商品選びが「直感的」であること。
「商品が多すぎて、自分の好きな商品を探せない」。フェリシモSC事業部の三浦卓也事業部長は、サイトのコンセプトを検討する際、若年層への調査から、そんな意見が多いことに改めて気付いたという。一方で、商品を見た瞬間に、直感で購入するかどうかを決める若者が少なくないという発見もあった。スキマルは、こうした若年層の意見、購買行動を勘案してデザインされている。

スキマルでは、商品を探すのは消費者ではない。2人のスタイリストが商品を選び、毎週水曜日にサイト上で25のアイテムを“提案”している。利用者は提案された商品に対して、それが好きか嫌いかを判断する。
具体的には、提案された商品のうち、好きだと思える商品が表示されたら、画面上で指を右側に滑らせて「お気に入りリスト」に追加する。「好みでない」と感じたら、指を反対側(左側)に滑らせる。こうして、直感で選んだお気に入りの商品リストが出来上がる。後から、そのリストを見て、購入したい商品を選んでもらうという仕組みである。
この操作によってフェリシモは、商品ごと、利用者ごとの“好き嫌い”の情報を把握することができる。
コマ撮り動画で世界観を表現
スキマルのもう1つの特徴は、商品紹介に動画を使っていることだ。「商品写真が並んでいるだけでは、訴求力に欠ける。継続的に利用してもらうにはサイトの世界観が重要。スキマルの世界観を表現しつつ商品を提案するには、動画が最適と判断した」(三浦氏)。
とは言え、ストーリーや映像などにこだわって作りこんだ、というわけではない。「どれほど凝ったものでも、長さが10分もあったら、最後まで見てくれる人など、ほとんどいない。直感的に、2~3秒で、『これは面白いぞ』と思ってもらえる動画を目指している」(三浦氏)。その結果、商品を紹介する動画は、数枚の写真をつなぎ合わせて連続再生する「コマ撮り」のようなものになった。
例えばジャケットを訴求する動画では、モデルが登場し、ジャケットを羽織り、メガネをかけて、カバンを持つ。こうした一連の流れをコマ撮りして動画に仕立てている。これなら1つのページで複数の動画を同時に表示しても“重くならない”。3G回線など、通信速度が速くないスマートフォンでも、ストレスなくサイトを見られる。
「多い時には、1つのアイテムを200人がお気に入りに入れてくれる」(三浦氏)など、スキマルの利用者は着実に増えている。まだ目標とする人数には届いていないが、スキマルの利用者が増えれば、消費者の“好き嫌い”というユニークな情報を、全社的に商品レコメンドやメールマーケティングに活用する構想もある。
例えば、スキマル利用者の商品ごと、属性ごとの好き嫌いの比率、あるいは購買履歴などの分析結果を、フェリシモ利用者に対する商品レコメンドやメールマーケティングに活用。一人ひとりに適した商品を提案するカスタマイズを実現する、というものである。
今後は、スキマルの利用者からテーマなどを募り、そのテーマに沿って商品を提案するなど、双方向性のある企画を展開。スキマルの活性化と利用者増を図る。