油を使わずに揚げ物を作ることができる調理家電が今、売れに売れている。オランダの大手電機メーカー、フィリップスの日本法人、フィリップスエレクトロニクスジャパン(東京都港区)が今年4月末に発売した「ノンフライヤー」だ。

いま現在も「その他調理家電」で人気トップ(「価格.com」のページより)

 容器内で最高200度の熱風を高速に対流循環させる技術で、食材に含まれる油を使って揚げるため、脂肪分を最大80%カットできるのがウリ。油を使わない揚げ物調理器という斬新なコンセプトが関心を集め、消費者のヘルシー志向とも一致したことがヒットの理由だ。

 当初、年内5万台だった販売目標は上方修正を重ね、実に4倍増の20万台を見込んでいる。2013年のヒット商品番付に恐らく入ってくるであろうこの商品にも「デジタル」の貢献があった。商品の特徴を説明した1分10秒ほどのYouTube動画が、好調な販売を下支えしている。

 新ジャンルの商品ゆえ、炊飯器や電子レンジのように家電量販店で棚は確保されておらず、消費者の認知も低い。したがってまずは何ができる商品なのか、どんなメリットがあるのかを説明する必要がある。発売当初はテレビ通販番組に注力し、映像で商品コンセプトの理解と認知を広げていく予定だった。そこでテレビ通販向けに、調理の実演や簡単な技術解説、丸洗いできてお手入れがラクであることなどをアピールする1分超の長編CM動画を制作した。

大手家電量販店がECサイト内でノンフライヤーの紹介動画をインライン再生できるようにしている

 この動画をYouTubeの自社チャンネル、および自社サイトのノンフライヤー紹介ページ内で公開したことが吉と出た。ヨドバシカメラ、ヤマダ電機、ケーズデンキといった家電量販店大手が、自社EC(電子商取引)サイト内のノンフライヤー紹介・販売ページで、このYouTube動画をページ内再生できるように取り込んだのだ。そのため動画再生回数が急伸。

 同時期に公開したお手入れ方法の動画や料理研究家のインタビュー動画などの再生回数は1万数千回にとどまっているのに対し、量販店ECが取り込んだ商品紹介動画は17万回超(9月24日時点)と、ケタ違いの伸びを見せている。

ノンフライヤーの商品紹介動画再生回数は17万回超に(9月24日時点)

 量販店ECサイトへの動画の埋め込みはフィリップス側から働きかけたものではないという。量販店側が自発的に取り込んでくれて再生回数が伸びたのだからラッキーではあるが、それもこの動画がコンテンツとして有力な販促材料になりうる内容だったからこそだ。

家電量販店にとっても「渡りに船」

 量販店は売れ筋商品の販売を伸ばすべく、独自に商品説明や使用感のレポート記事を作成している。メーカー側が公開している分かりやすい商品説明動画は「渡りに船」だ。特に新しいコンセプトや画期的な機能については、メーカー側が積極的に動画で発信していけば、流通側でそれを流用し、売れ行きに貢献する可能性がある。テレビ通販を販売ルートとしていない商品でも、テレビ通販風のプロモーション動画は制作してみる価値がありそうだ。

 2010年に欧州で発売して以来、すでに世界40カ国で販売し、累計販売台数100万台を突破しているノンフライヤー(海外では「エアフライヤー」)だが、日本国内での発売は遅れた。同社は2009年までコーヒーメーカーなどの調理家電を日本で展開していたが撤退しており、再参入に当たっては慎重にコトを進めざるを得なかった。

 この同社の慎重な販売計画は良い意味でハズれ、発売前から予想を大きく上回る予約注文が入った。これは国内未発売の昨年、テレビ朝日系「SmaSTATION!!」などの情報番組で“海外の面白家電”として紹介され、問い合わせが殺到するなど一部で期待感が高まっていたためだ。そうした「新しもの好き」層の購入が一巡した後も、売れ行きに陰りは見えていない。発売から5カ月が経過した現在も「その他調理家電」ジャンルでノンフライヤーは人気トップに立っている。

 まずはネットで情報収集し、店舗で“実物”の商品を見た後、価格を見比べながらECで購入する--、「ショールーミング」と呼ばれる購買行動が一般化するにつれ、ECサイトでの分かりやすい、説得力のある商品説明は、ユーザーの購入を後押しする重要な要素になる。メーカー側の積極的な発信がカギを握ると言っていいだろう。