「まずはディスプレイ広告などの配信や自社サービス間の誘導に、データを活用したい」

 こう語るのは、リクルートライフスタイル(東京都千代田区)のネットビジネス推進室ウェブマーケティング1グループの石井智之氏だ。同社は今夏にDMPを導入した。

 旅行情報サイト「じゃらん」、美容院の情報サイト「ホットペッパービューティー」、EC(電子商取引)モール「ポンパレモール」など優先順位の高いサイトから、DMPを導入する計画だ。

 同社のサイトは、会員制のものが多い。そのため、IDとクッキーをひも付けることで、サービスの利用履歴やデモグラフィック情報などもDMPに取り込める。「最初のステップではサイト上の行動履歴に性別や年齢といったデモグラフィック情報を掛け合わせた分析から始める」(石井氏)。

 この分析結果から、顧客や見込み客を複数のセグメントに分けていく。このセグメントを広告配信のターゲットに設定して、それぞれのセグメントごとに最適なサービス、広告クリエイティブを作成して配信する計画だ。

 いずれは、「すべての顧客接点にデータを使うことで、顧客や見込み客、それぞれに合った内容やタイミングで、適切なコミュニケーションが取れる。リクルートのサービスを気持ちよく利用してもらうことがDMPを活用する上での最終目的地だ」と石井氏は将来像を描く。

第三者データで富裕層を狙い撃ち

 自社が保有するデータを活用し始めた花王やリクルートに対して、(2)第三者の所有するデータを活用しているのが、楽天だ。

 楽天はDMPが注目を集める以前から、「楽天スーパーDB」と呼ぶ、独自の顧客データベースを構築してきた。集めるデータはグループを横断した購買情報だ。ECモール「楽天市場」はもちろん、旅行予約サイト「楽天トラベル」、書籍やCD専門ECサイト「楽天ブックス」などの購買情報もすべて集約される。このデータを、顧客に送るメールや楽天グループのサイトで表示するレコメンドなどのパーソナライズ化に活用している。

 同社は第三者のデータを活用した広告配信にも取り組んでいる。その一例が、メールマーケティング支援のエクスペリアンジャパン(東京都港区)が提供するデータ商品「エクスペリアン・モザイク・ジャパン」の活用だ。

 エクスペリアン・モザイク・ジャパンは、消費者の収入、世帯構成、住宅の種類、居住地などの統計データから、国内の消費者を11グループ、50タイプに分類したデータである。例えば、「高級住宅街の田園調布に住む人は『会社役員・高級住宅地』グループ」に分類されているといったイメージだ。

 このデータを楽天スーバーDBのデータと掛け合わせて分析することで、例えばある地域に住む富裕層は楽天のサービスでAという商品をよく購入している、といった傾向を導き出す。このセグメントに対して、出店店舗の広告を配信したり、メールを配信したりして、購買を促している。

 こうしてセグメントをした場合、「メールでは、ノンターゲティングのメールと比べて転換率(コンバージョン率)が数倍高まる」(楽天市場事業マーケティング部の藤田浩平部長)など、大きな成果につながっている。

見込み客が多いサイトを発掘

オールアバウトのデータを使い見込み客の多いカテゴリーを割り出す

 DMPに統合できるデータのうち、(3)メディアのオーディエンスデータの活用では、オールアバウトが月間2950万人が利用する自社の情報サイト「All About」のオーディエンスデータを生かした広告商品「ユーザディスカバリータイアップ」を開発した。広告主は、オールアバウトの持つオーディエンスデータを使ったターゲティング広告を配信できる。ターゲット層のオーディエンスデータを広告主のDMPに蓄積して、All About内だけでなく、外部サイトにも広告配信できるのが特長だ。

 All Aboutでは「家事・ライフスタイル」「一戸建て」「自動車」といった、64のカテゴリーでコンテンツを配信している。広告主サイトを訪問した人のクッキーとAll About訪問者のクッキーを突き合わせることで、All Aboutのカテゴリーごとに、広告主サイト来訪者との重複比率を割り出す。その比率が高いカテゴリーは、広告主の潜在顧客が多く含まれると推測できる。

 この分析結果に基づいて、タイアップ広告を掲載するカテゴリーを決める。タイアップ広告の来訪者のデータもDMPに集める。広告主は、集めたデータとDSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)を連携することで、All About以外のサイトの広告枠も使ってターゲティング広告を配信して、広告主のサイトやAll About内のタイアップ広告ページへ誘導できる。

 オールアバウトに限らず、ヤフーや楽天など膨大な利用者データを持つ企業が、自社の媒体価値の向上を目指して、DMPと連携した広告商品を開発する動きは今後も増えるだろう。

 楽天は9月9日から自社のアクセスデータなどを活用した広告主向けのサービスを始めた。「楽天DSP」だ。楽天市場の閲覧データや顧客属性でセグメントを設定して、外部サイトに広告を配信できる。あくまでもDSPのため、広告主のデータも統合してセグメントを作ることはできないが、今後企業向けにプライベートDMPの提供を始める可能性は十分ある。