家具やインテリア雑貨などを販売するバルス(東京都渋谷区)は、EC(電子商取引)事業の強化を急ぐ。若い女性に人気が高い主力ブランド「Francfranc(フランフラン)」のEC化比率を、2014年末までに10%へ引き上げることを目指す。1年半ほどで4~5倍にまで高める計算だ。同ブランドの魅力であるデザイン性と質感の高さを伝えるため、ネットの販路は自由度が高い自社ECサイトにほぼ特化。写真の見せ方や店舗連携に徹底的にこだわる。

9月2日にリリースした「Francfranc」のスマートフォン向けアプリ

 EC事業強化の一環として、9月2日、スマートフォン用ECアプリの提供を開始した。会員登録を促進するため、アプリから友だち3人にメッセージを送った先着1万人(友だち分を含む)に、「アプリ限定香り付き綿棒」を、プレゼントするキャンペーンを実施中だ。

 企業によるスマホアプリ投入はもはや珍しくないが、バルスがECサイトを設けたのは5年前のこと。デザイン性と質感の高さにこだわった自社企画品をメーンとする同社は、商品を実際に手に取って確かめてもらい、スタッフが商品について説明もできる店舗販売にこだわってきた。

 アプリ投入は、その方針が大きく転換されたことを象徴するものだ。6月にはパソコン向けECサイトも刷新しており、同社のEC事業重視の姿勢は鮮明だ。

 PCとスマホという2つのサイトを活用。現状ではフランフランブランド全体の売上高に対して数%にとどまるEC事業の比率を、2013年内に5%、2014年中には10%程度まで拡大することを目指していく。

“ZOZOTOWNなし”の拡大策

 バルスが目指すEC比率10%という目標は、一見するとさほど高いものに思えない。だがそれは違う。

 ネット活用に熱心な企業の1つとして知られるアパレル大手ユナイテッドアローズでも、売上高全体に占めるEC比率は11%ほど。しかもスタートトゥデイが運営するファッションECサイト「ZOZOTOWN」など他社サイトを通じた売り上げが少なからぬ割合で含まれているとみられる。

ブランドサイトとECサイトを一体化する形でリニューアルしたFrancfrancのサイト

 バルスは自社企画品を、他社サイトではほとんど販売していない。10%という目標をクリアする場所は自社のECサイトだけだ。この高い目標をいかにしてクリアしようとしているのか。ポイントは2つある。それが自社ECサイトにこだわる理由でもある。

 1つは、消費者がフランフランというブランドに抱いているハイセンスで質感が高い商品が並ぶ店というイメージを、ECサイト上にも可能な限り盛り込むことである。

 「商品にどの方向からライトを当て、どれくらいパース(傾き)をつけて撮影すると、商品がより美しく見えるか。それこそ数ミリ単位で位置を変えて何枚も撮影するといった、試行錯誤を繰り返している」

 スマホアプリの開発やECサイト刷新を主導した営業本部販売部マーケティングチームの桐原陽太マネージャーは、商品をより美しく見せることへのこだわりぶりを、こんなエピソードを交えて話す。

 サイトを見ると商品の輪郭に沿って切り抜く「切り抜き写真」が多いが、中にはあえて照明による影を残したものもある。商品の形状を立体的に感じさせたいという配慮からだ。

 個々の写真の美しさに加えて、それをどう配置するとサイトの質感が上がるかについても、写真や文字の細かな位置調整を繰り返したという。こうした作業はサイトオープンから3カ月が経過した現在も続いている。

ECサイトであえて商品の「店頭在庫情報」を発信。店舗との連携を強化

 EC事業拡大に向けた策の2つ目は店舗との連携を強めること。フランフランのECサイトはおよそ5000点の商品を掲載する。そのそれぞれについて、全国に約107ある同ブランドの店舗の在庫状況が分かる仕掛けを設けている。

 商品の詳細情報ページにある「取扱い店舗リスト」のボタンをクリックすると、例えば「GINZA Francfranc 在庫:○ L・A・G by Francfranc吉祥寺店 在庫:△…」というように店舗リストとともに、前日時点における在庫状況が表示される。○は在庫あり、△は在庫わずかという意味である。

 ECサイト用も1つの店舗として扱われており、その在庫は店頭在庫とは別に管理している。消費者がネットで商品を見てそのまま購入しようというなら、必ずしも必須な情報ではない。それでも桐原氏は店頭在庫情報を盛り込むことにこだわった。

 それはECサイトで気に入った商品を見つけたら、それを目で見ようと店頭に出向く消費者が少なくないと考えるためだ。自分の目で見て手触りや質感を確かめる。購入するのは十分に納得してから。そうしたこだわりの強いファンがこのブランドを支えている。だからこそECサイトにも店頭の在庫状況は必須なのである。

 とは言え消費者が店舗に行ってしまうような情報の掲載は、EC事業の拡大につながらないのでは。そんな疑問を感じる人もいるかもしれない。

 桐原氏の見方は違う。「店舗とECサイトは顧客や売り上げを奪い合うライバルではない。両者が連携してこそEC事業は成長できる」。

他社より多い購入までの来店回数

 店頭在庫情報は確かに「店舗への送客装置」としても機能する。だが先に触れたようにフランフランにはこだわりの強い顧客が多い。ソファーのような大型商品はもちろん食器やクッションカバーといった商品でも、1回の来店で購入する顧客は少ない。他店と見比べた上で再来店するなど購入検討期間、そのための来店回数は一般的な雑貨店より長く、多い。そんな顧客が中心だからこそいったん店頭に出向いても、後日、ECサイトから購入してくれる人も多いというわけである。

 現状ではネットよりも店舗の方が集客力が高いことも、店舗連携が重要になっている理由の1つだ。ECサイトの会員組織「Francfrancメンバーズ」の登録者は30万人だが、その9割以上は店舗に来店したことがある人たちだ。一時期ブランド認知を目的とするディスプレイ広告や検索連動型広告などを試したことがあったものの「当社の顧客層には、まるで響かなかった」(桐原氏)。現在はほぼ実施していない。

 自然、同ブランドを知るきっかけは「来店」が最も多くなっている。オンライン会員を増やすためにも店舗は重要な拠点なのである。実際、6月のサイト刷新時や、9月のスマホアプリ投入時などにそれを来店客へ知らせるキャンペーンに協力してもらっている。ネットの売り上げ拡大とその前提となる会員数の増加の両面で店舗連携は欠かせない。

 今後も随時サイトの見直しを続けつつ、会員数50万人を目指してデジタルマーケティング施策を連打していく考えだ。