「エプソンのスタンプ第1弾『エイさん』新登場 みんなGETしてね エプソンと『エイさん』って、どんな関係なんだろう? う~ん・・・気になる答えは9月の配信で」
7月末にLINE公式アカウントを開設したセイコーエプソンが約1カ月後の8月27日、無料スタンプ「エイさん」を公開した。座布団のような扁平型でひらひら泳ぐ魚類のエイである。同社がネーミングライツを持つ品川プリンスホテル内の水族館「エプソン 品川アクアスタジアム」でも人気者だけに、水族館のPRとみる声もあった。が、夏休み残り数日での公開はやや不可解だ。

その謎が明らかになったのは、スタンプ公開1週間後の9月3日のこと。同社はインクジェットプリンター「カラリオ」シリーズの年末商戦へと向けた新モデル発表会を開催。前年に引き続きイメージキャラクターを務める女優の忽那汐里さんとともに着ぐるみのエイさんが登場し、A4機種サイズながらA3印刷ができる新モデル「EP-976A3」を披露した。
会見にはもう一匹、小さいサメを象った「ちいサメ」も登場。省スペースでA3サイズもプリントできる新機種をゆるキャラで表現した。エイさんスタンプは新モデルの特徴を表したティザー(予告)広告だったのだ。同社広報・宣伝部WEB課長の谷口雅彦氏は、「エイさんからA3プリンターを想起してほしい」と期待をかける。
これまで企業が公開するLINEスタンプは、日本ケンタッキー・フライド・チキン「カーネルおじさん」、大丸松坂屋百貨店「さくらパンダ」、日清食品「チキンラーメンひよこちゃん」といった具合に既にキャラクターとして認知が進んでいるものをスタンプ化するのが一般的だった。スタンプで初公開した新キャラに、新製品の特徴を掛け合わせるシカケは、ダジャレではあるが新しい魅せ方だ。
同社は国内インクジェットプリンター市場においてキヤノンと激しく競り合いながらもここ数年は首位を堅持している。国内出荷台数も微増で推移しているが、それでも危機感を持つ。スマートフォン、タブレットの普及などで家庭用パソコンの出荷は前年割れに転じているだけに、パソコン周辺機器の位置づけであるプリンターにもその影響が及ぶ可能性は否定できない。
そこで同社はむしろスマホユーザーを取り込んでプリントしてもらう策に打って出ている。一昨年夏にスマホからダイレクトに無線LANを通じてカラリオからプリントできるアプリ「Epson iPrint」を公開。今年は同アプリに、友だちから送られてきたLINEの画像や、「LINE camera」でデコレートした画像をダイレクトにプリントできる機能を盛り込んだ。こうした機能に目を向けてもらうには、スマホユーザーの多くが利用するLINE上での訴求が威力を発揮する。
友だち登録を条件にエイさんスタンプを公開したことで、同社LINEアカウントの友だち数は300万人を突破した(9月7日時点)。万円単位の商品を扱い割引クーポンを配信しているわけでもないアカウントとしては異例の好反響だ。企業の新しいLINE活用法を示したと言っていいだろう。