意外な企業が料理ジャンルのWebサービスに名乗りを上げた。7月末に公開された献立提案サービス「Ohganic(オーガニック)」の開発提供元、東京エレクトロンデバイスである。半導体製造装置メーカー、東京エレクトロングループの半導体商社が、なぜ献立提案サービスなのか?

東京エレクトロンデバイスが開発した献立提案サービス「Ohganic(オーガニック)」

 同社は半導体・電子部品の販売や技術サポート業務のほか、ネットワーク、ストレージ、データベースといった技術を活用したソリューションビジネスを展開している。

 こうしたデータ管理技術を土台にしたアプリケーションの開発を新規事業の柱としていくため、2012年春に、CN(コンピュータ・ネットワーク)事業統括本部内にアプリケーションサービス企画グループを新設した。そのサービスの第1弾として企画したのが、この献立提案サイトだった。

 レシピ系のサイトには「クックパッド」や「楽天レシピ」といった“大物”の先行勢が君臨している。書店にもレシピ本がたくさん並んでいる。料理の世界で実績があるとは言えない同社が、後発で乗り込んで、勝算はあるのか気になるところだ。その点について、同社アプリケーションサービス企画グループの神本光敬グループリーダーは次のように説明する。

 「既にレシピサイトがたくさんあり、内容も充実しているが、献立を『考える』『探す』『選ぶ』という作業から、利用者が解放されたとは言えない。その点、当社のOhganicは検索型のレシピサイトではなく、個々人の健康状態などに合わせてレシピの組み合わせである『献立』を最適化する提案型のサイトだ」

 さらに神本氏は、Ohganicは時流に乗ったサービスであると説く。

 「Webサービスは、例えばニュースジャンルでは『Gunosy(グノシー)』のような個人の興味に合った記事を推薦するサービスが人気で、膨大な情報の中からアルゴリズムでお薦めを提案する方向に向かっている。Ohganicもその流れに沿ったサービスと言えるのではないか」

“台所事情”に合わせてレシピを提案

 Ohganicの利用者にはまず、「1レシピあたりの上限調理時間」「アレルギー食材のチェック」「カロリー設定」の3つの基本情報を入力してもらう。身長・体重の値から肥満度の指数であるBMI(ボディマス指数)を算出。現状の体重維持を目指すか、あるいは標準体重を目標とするかによって、必要カロリーと栄養素の摂取目標量を自動的に設定し、この数字に見合った献立を提案する。

 「今日はハンバーグにすることは決めている」「冷蔵庫にあるかぼちゃとひき肉は今晩使い切ってしまいたい」――。そうした“台所事情”にも合わせて提案が可能なため、使い勝手はいい。「定番料理」欄で「ハンバーグ」を選ぶと、瞬時に「いわしのハンバーグ」や「おから入りハンバーグ」などを副菜、汁物などとセットで設定カロリー内で提案する。

 かぼちゃとひき肉を使うと決めている場合は、「食材選択」欄であらかじめ指定しておけば、かぼちゃのそぼろ煮などを提示する。利用者が汁物を提案されたものから変えたい場合は、「変更する」ボタンを押せば、やはり設定カロリー内で他候補を瞬時に表示する。

 各レシピはベターホーム協会(東京都渋谷区)が主催する料理教室の講師が考案したものを利用しているが、献立をコンピュータで作成するには、人手による調整も必要だった。いくら設定カロリー内でも、例えば「カレーライス」と「ごはん」の組み合わせや、明らかに旬から外れた食材を使うものは弾かなくてはいけないからだ。

 朝食に向かないといったメニューもあった。そこでレシピに載っているカロリーや調理時間などのデータのほかに、季節性や朝・昼・夕食の向き不向き、相性といったデータを手作業で加えて、違和感のない献立組み合わせを表示するようにしたという。

 提案可能な献立は約200万件に達する。同社の高速データ処理システムで、この膨大なデータから利用者の設定条件に見合った献立をリアルタイムに提供している。現在、同社はOhganicを無料で公開しているが、今後は医療機関へのサービス提供や、提示メニューの食材をネットスーパーで簡単に購入できるサービスの付加、あるいは同システムの他業界への転用などでマネタイズしていく考えだ。