O2O(オンラインtoオフライン)マーケティングに取り組む企業は多いが、その多くはメールや無料通話・メールアプリ「LINE」などを通じたクーポン配信による集客、販促にとどまるのが現状だろう。その中、リアル店舗とEC(電子商取引)サイトの連携を経営課題に据え、相互集客から生み出す売り上げを急拡大させているO2O先進企業がある。リサイクルショップチェーンのコメ兵だ。

 その注力ぶりは、藤原義昭WEB事業部長の言葉にも表れている。

 「当社では、新規出店する際に、O2Oも駆使しなければ絶対に達成できない売上予算を設定している」

 同社の2013年3月期の売上高は、前期比18%増の343億6800万円と好調だった。中でもECサイト関連が45億2000万円(同32%増)となり、同事業が業績をけん引する構図は明確だ。

 ECサイト関連といっても、ネットで集客してネットで売り上げる純粋なECサイト売り上げは、その約半分にとどまる。残りは、「ECサイトをきっかけに店舗で商品を購入した」ケースの売上高が15億7000万円(同48%増)、「店頭に在庫がなく、ECサイトから商品を取り寄せて店舗で購入した」ケースが7億1000万円(同86%増)とリアル店舗とECサイトの双方が貢献した売り上げだ。

EC関連売上高を毎年20%ずつ伸ばす

商品詳細ページに店舗に取り寄せ用のボタンを設ける

 成果が目覚ましいだけに、O2Oへの経営陣の期待は高い。「ECサイト関連の売上高を毎年20%ずつ伸ばしてほしいと言われている」(藤原氏)。この目標を純粋なECサイトの売上高だけで達成するのは難しく、この点からも、店舗との連携は重要だ。

 コメ兵がO2Oに取り組み始めたのは、約3年前のこと。貴金属、バッグといったジャンルごとに分かれていたECサイトを統合する際、ネットの顧客の声を分析したことがきっかけだ。

 統合の責任者だった藤原氏は、単にサイトをまとめるのではなく、コメ兵ならではの特徴が際立つサイトに変え、より効果的に顧客にアプローチしたいと考えた。

 そこで、ブログや「OKwave」などのQ&Aサイトにあったコメ兵に関する投稿に注目。分析した結果、「商品について専門的な知識を持つ販売員による接客こそが、コメ兵の強み」という結論に至った。コメ兵は高級腕時計やブランドバッグが主力商品。高額商品だけに、購入するかどうか、すぐに決められない顧客が多い。そこで販売員が商品の特徴を丁寧に説明し、購入につなげてきた。

 ましてネットなら、商品に興味を持っても購入をちゅうちょしている顧客も多いはず。また、リサイクル店だけに商品の状態を気にする顧客もいる。それならサイト単独での売り上げを考えるのではなく、店舗に誘導して、得意の接客を生かした方が、成果につながる。そして、購入単価も高まるのではないか─。

 藤原氏はそんな仮説を立てた。ECサイトを、店舗誘導のツールとして位置付けるという同社のユニークな施策は、こうした経緯で生まれた。

 藤原氏の仮説が正しかったことは、数字が証明している。2013年3月期のECサイトの商品の平均購入単価は9万4000円。一方、ECサイトから店舗に誘導した顧客は23万3000円にまで高まる。

ECとPOSを連携して効果測定

 コメ兵のO2O施策を担っているWEB事業部は本社がある名古屋の都心部ではなく、少々離れたロードサイド店舗にある。この店は、商品倉庫としての役割も持ち、入荷した商品はいったんここに全て集約され、各店舗へと配荷されていく。その際、WEB事業部はECサイトに掲載するための商品写真を、一商品ずつ、撮影している。

 商品ごとに付与している商品コードは、商品写真を掲載する際に、同事業部のスタッフが設定している。顧客がECサイトの商品詳細ページから、店舗での取り寄せを申し込むと、この商品コードに、取り寄せた店舗の情報がひも付けられる。さらに、そのデータとPOS(販売時点情報管理)データと突合することで、顧客がネットで取り寄せた商品が、実際に店舗で購入されたかが分かる仕組みになっている。

ECサイトで店舗取り寄せを指定された商品が、実際に売れたかを把握する

 このようにして、ECサイトを起点とする店舗売り上げを把握することで、店舗での購買状況も考慮した、検索連動型広告の最適化を可能にした。

 出稿する検索キーワードごとに、広告クリック数を母数に、店舗でのコンバージョン率(CVR)を測定している。中にはECサイトでそのまま買う人もいるため、ECサイトのCVRも加味して、よりCVRの高いキーワードへの出稿量を増やして効果を高めている。

 もちろん、店舗を起点にECサイトから商品を取り寄せて、店舗で購入してもらうケースも、重要な施策となっている。この場合、平均購入単価は26万3000円。ECサイトから店舗に誘導した顧客より、さらに3万円ほど高い。「販売員が関与する割合が増えるので、顧客単価も増える傾向にある」と藤原氏は見ている。

 コメ兵では店舗に顧客が求める商品がなかった場合は、必ず販売員が付き添って、その場でタブレットなどを使いECサイトを閲覧してもらっている。目当ての商品がECサイトにあれば、その商品の取り寄せを勧める。ネットでなら、コメ兵の他店舗で販売している商品も分かるので、欲しい商品を見つけてもらうように努め、購買へとつなげている。

購入決断の後押し狙い、店舗オペレーションも強化

 現在、コメ兵が力を注いでいるのは店舗オペレーションの改善である。コメ兵におけるO2Oのマーケティングファネルは、「(ECサイトからの)取り寄せ」「来店」「購買」の大きく3段階に分けられる。このうち来店率の向上、購買決断の後押しといった購買に近い段階の成果を高めるには、店舗の協力が必須となる。

 仮に、顧客がECサイトから店舗取り寄せを希望しても、来店しなければ購買には至らない。そうした脱落を防ぐために、取り寄せを希望した顧客には店舗スタッフが電話をかけて、必ず来店してもらうようにしている。

 店ごとの成功事例を、全店で共有する取り組みも始めている。例えば、大阪の心斎橋店は、顧客と一緒にECサイトを見る際、立ったままより椅子に座ってじっくり見てもらった方が、CVRが高まるということに気がついた。こうした知見は、WEB事業部を経由して、常に全社的に共有している。

 6月には、CRM(顧客関係管理)を実現すべくECサイトと店舗のポイントシステムを統合した。オンラインとオフライン、両方の購買履歴が一元的に把握できるようになった。統合した購買履歴データを使って、顧客ごとに最適化したレコメンドメールの配信も始める予定である。

 得てしてO2O施策では、いかにオンラインから集客するかに、頭が行きがちだ。しかし本当に大切なのは、店舗と一丸になって取り組むこと。コメ兵の事例が教えているのは、そんな当たり前のことが生み出す「価値の大きさ」なのである。

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