プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)は、化粧品ブランド「SK-II」への若年層の取り込みを狙ったユニークな試みを実施。大きな売上増につながる成果を得た。
SK-IIは百貨店が主な販路だが、「(若い女性には)高級化粧品というイメージが強く、(百貨店に入っている)既存の店舗には近寄りがたいという声すら聞かれた」(SK-II PRの今瀬友佳氏)。
実際、商品の価格帯は高めで、顧客は30~40代が中心。学生などが購入するケースは少なかった。といって若年層との接点を作らないと、顧客が対象年齢になっても、SK-IIを選択肢に入れてくれない懸念がある。
そこで若い女性に気軽にSK-IIブランドを体験してもらうことを目的に、7月2日~15日にかけて、デジタルを活用した期間限定ショップ「ピテラハウス」を東京・表参道に開設した。20~30代の女性が多く行き交う場所にショップを開設し、百貨店よりも気軽に立ち寄ってもらうことを目指した。

ショップの立地は狙い通りだったが、建物は1階は狭く、2階が広い構造だった。そのため無料のカウンセリングコーナーなどを2階に設置せざるを得なかった。「入り口からは、2階に何があるのかが全く見えない。来店した人に2階に上がってもらうのは難しいのではと感じていた」(ブランドオペレーションスキンケア&コスメティックスの小山瑞穂デジタルマーケティングマネージャー)。いかに2階へ自然に誘導する導線を作るか。ここでデジタルが活躍する。
QRコードで来店者を2階へ誘導
ピテラハウスの来店者には、まずQRコードが印刷されたリストバンドを手首に付けられる。店内には、QRコードを読み込ませる端末を3台設置した。2台は1階、もう1台は2階だ。来店者がリストバンドのQRコードを端末に読み込ませると、端末の上に設置されたタブレットにSK-II関連のクイズが表示される。それに回答し、スタッフにブランドや製品に関する説明を受けながら、順に回り、3カ所全部でQRコードを読み込ませると化粧品サンプルがもらえる。
サンプルを渡す際には、無料カウンセリングも案内する。こうして、QRコードを起点に、自然と無料カウンセリングへと案内する導線を作った結果、「週末にはカウンセリング待ちの人が列を作った。これは既存店ではなかなか見られない光景」(小山氏)と担当者が言うほどの盛況となった。
カウンセリングを待っている来店者が退屈しないように、もう1つデジタルな仕掛けを用意した。「ピテラリウム」という撮影ブースで、SK-IIの化粧水に浸っているかのようなスローモーションの動画が撮影できる。リストバンドのQRコードをスマートフォンなどで読み込むと、来店者ごとのページが表示され、そこで撮影した動画をすぐに見られるようにした。動画をFacebookに投稿した来店者、先着50人に別のサンプル商品をプレゼントして情報の波及も狙った。
ピテラハウスは、商品販売にも大きな影響を与えた。「具体的な数値は申し上げられないが、昨年同月比でSK-IIの売上額が2桁増になった。伸びが顕著なため、ピテラハウスの影響であるのは間違いない」(今瀬氏)。
この取り組みを単発で終わらせないため、「出張ピテラハウス」と銘打ち、ほかの地域の百貨店や量販店でも展開していく方針だ。