文具メーカーのゼブラは8月19日から、アプリ開発会社コミュニティファクトリー(東京都港区)のスマートフォン向け写真装飾アプリ「DECOPIC」を活用した投稿型キャンペーンを始める。DECOPICの主な利用者である若年層の女性に、ボールペンブランド「サラサクリップ」を訴求することを狙う。

ゼブラが実施する投稿型キャンペーン『サラサクリップ×DECOPIC』デコフレーズスタンプコンテストの応募サイト

 DECOPICは、スマートフォンのカメラで撮影した写真をスタンプやフレーム、文字などで装飾できるアプリだ。ゼブラはこのキャンペーンで、DECOPICで使える「写真を装飾するための素材」を一般から募集する。参加者は、ボールペンで装飾素材となるフレーズなどを書き、その作品をスマートフォンのカメラ機能で撮影してWebサイトから応募する。専用ハガキに作品を書いて郵送で応募することもできる。

 キャンペーンは2回に分けて開催する。1回目が8月19日~10月14日で、2回目は10月15日~2014年1月20日。期間中、全国のサラサクリップ取扱店のうち2000店の店頭にPOPを設置するなどしてキャンペーンを告知する。5000点を目標に作品を集めて、2回のキャンペーンでそれぞれ優秀作品13点を選ぶ。優秀作品はDECOPICの装飾素材(スタンプ)として実際に配信される。

サラサ初の若年女性向け企画

 このキャンペーンは女子中高生などの若年女性にターゲットを絞っている。ゼブラはこれまでマスマーケティングを中心にしてきており、ターゲットを限定したキャンペーンは、サラサクリップとしては初の試みだ。サラサブランドが登場してから既に10年。市場環境が大きく変化していることから、新たなチャレンジが必要と判断した。

 日本筆記具工業会によれば、2012年の文具の出荷額は1283億4700万円で、5年前と比較して14%も減少している。「(市場全体の落ち込みは)企業のOA(オフィス・オートメーション)化が主な要因だが、当社の場合、筆記具の売上高は微増微減で、何とか踏みとどまっている」(国内営業本部広報室の池田智雄担当課長)。

 そんな環境の中で「水性ボールペン」は例外だ。2012年の販売額が5年前と同水準の362億1500万円にまで回復している。サラサクリップはこのカテゴリーに入る製品。文具の需要が全般的に落ち込む中で、水性ボールペンだけは若年層の女性による購入が増え、勢いを取り戻しつつある。

 ゼブラ本社営業ユニット営業業務企画部国内企画課の上野泰造氏は言う。「需要をリードしているのは女子中高生。彼女たちはカラーペンを1人で何本も持つことが珍しくない。女子中高生は法人に次ぐ大きな市場と見ている」。

女子中高生に人気が高い「手書き風」スタンプ

 そこで、若年女性に絞ったマーケティング施策を検討する中、目を付けたのがDECOPICだった。同アプリは、1600万人以上がダウンロードしており、月間アクティブ利用者は300万人超。毎日15万枚以上の写真がDECOPICで装飾されているという。特筆すべきはその利用者層だ。アンケート調査によると、利用者の約45%が10代と20代の女性で、30代女性を含めると、95%にもなる。

 そのDECOPICで最近人気が高いのが手書き風のスタンプである。例えば、同じハート型のスタンプでも、手書き風のものと、そうでないものとでは、約4倍も利用回数に開きがあるという。

 ゼブラは、女性の利用者が多い点と、ボールペンで書いたような手書き風スタンプが人気だという2点から、DECOPICはサラサクリップとの相性が良いと考え、キャンペーンで活用することを決めた。

 自分が書いた作品が人気アプリのスタンプとなり、広く配信される点に魅力を感じてもらい、さらに実際にサラサクリップの鮮やかな発色や書き味がさらさらしていることなどを実感してもらい、ファンになってもらうことを狙う。コモディティ(汎用品)化が進む文具市場において、値段の安さなどではなく、サラサクリップというブランドの力で選んでもらえるような、消費者との関係作りを目指す。

 と、ここまで読んできて、読者はある疑問を感じたのではなかろうか。「写真を装飾するアプリ」であるDECOPICは、同様のことをボールペンでする機会を減らし、結局は、自社の首を絞めることになるのでは、と。

 これに対し、池田氏はデジタルの広がりが、むしろ文具市場に好影響を与えていると説明する。「一昔前は社内にデジタル化の進展を恐れる雰囲気があった。だが、今はむしろデジタルに寄り添うほうが重要だと考えている」。

 DECOPICなどのアプリが人気を集めたことで、写真などを装飾して楽しむ若者文化が生まれ、今やすっかり定着している。その結果として、同じことを手書きでするために、ボールペンを購入する機会が増えてきているというわけだ。なかなか興味深い動きだと言えよう。

 ゼブラのような文具業界に限らず、「デジタル化」を自社の市場を奪う「敵」と見なす企業、業界もあるだろう。しかし、もはやデジタル化の進展は止めようもない。ならば、その敵とどう付き合い、どのような工夫で味方に変えるか。その施策を考え、実施していくことこそが、今を生き抜くカギになるのではないだろうか。