「山本太郎氏のサイトには50代以上の中高年層の接触量が多かった」──。意外性のある分析結果が示されるたびに、会場からは驚きの声が上がった。

左からモデレータのニューズ・ツー・ユー神原弥奈子社長、パネリストのルグラン泉浩人社長、ヴァリューズ後藤賢治取締役、パイプドビッツ市ノ澤充オープンデータ推進事業部事業部長

 「モバイル&ソーシャル WEEK 2013」最終日、最終枠のパネルディスカッションは、その4日前に投開票されたばかりの参院選がテーマ。「ネット選挙運動解禁後の参院選で検証する有権者のアクセス・クチコミと投票先の関係性」と題し、有権者のネット上の行動・発言と開票結果との関係をデータで検証した。

 パネリストは、みんなの党のネット選挙対策を請け負ったルグラン(東京都渋谷区)泉浩人社長、政治・選挙情報ポータル「政治山」の運営責任者で議員秘書の経験を持つパイプドビッツの市ノ澤充オープンデータ推進事業部事業部長、ネット行動ログ分析会社ヴァリューズ(東京都港区)の後藤賢治取締役の3人。ニューズ・ツー・ユー(東京都千代田区)の神原弥奈子社長がモデーレータを務めた。

 公示期間中も候補者および政党がネットを使って選挙運動ができるようになった参院選だが、はたして有権者はネットを活用していたのか。パイプドビッツが投票締め切り直後の7月21日夜8時から翌朝にかけて全国20歳以上の男女有権者を対象に実施したアンケート(回答数1111人)では、投票先決定の情報収集に活用したメディアとして「インターネット」を挙げた人が28%に上った。政治情報サイト利用者が対象であり、その数値は一般より高めに出ている可能性があるが、テレビ(24%)、紙の新聞(23%)、選挙公報(13%)などを上回ってトップの数字だ。また「参考にしたメディア」として「ニュースサイト」を挙げた人は38.6%に達した。

 しかしながら選挙期間中の更新が解禁になった「候補者本人のブログやホームページ」を参考にした人は16.4%、「候補者本人のツイッターやフェイスブック」も12.9%とさほど伸びなかった。実は投票約1カ月前の6月27日に実施したアンケート調査でも同じ質問をしている。参考にしようと思う情報として「候補者本人のブログやホームページ」は56.9%、「候補者本人のツイッターやフェイスブック」は40.4%と当初は高い期待があった。

 この“落差”についてパイプドビッツの市ノ澤事業部長は、「候補者がネットで発信する内容に、有権者が期待する情報が盛り込まれていなかったと言える。政党・候補者と有権者との間にはまだ距離がある」と解説した。

 続いて、話題の候補者のネット選挙運動の動向分析に移った。ヴァリューズが保有するモニター約20万人のサイト接触先データからは、面白い傾向が見て取れた。

 7月(21日まで)のサイト訪問者数(候補者のホームページ、ブログ、Twitter、Facebook、動画の合計)が推計10万人を超えたのは、ネットのみで選挙運動を展開した伊藤洋介氏(14万8932UU、自民)と、脱原発を掲げた山本太郎氏(12万5355UU、無所属)の2人だった。

 伊藤氏は若者に人気のアーティストが応援のためにブログに登場したこともあり、30代のアクセスが圧倒的に多い。その半面、50代は30代の3分の1未満、60代以上は50代のさらに半分と激減する。一方の山本氏は、最も多いのは30代だが、僅差で40代が続き、50代以上も30代の8割の訪問者があることが明らかになった。

 ヴァリューズの後藤取締役は調査データを基に、「山本氏は、Twitterが若年層に、Facebookが40代に有効にリーチしていた」と、ソーシャル活用が幅広い年代への接触に結びついたことを指摘した。

ネットの声からアジェンダの表現を変更

 最後に、ネット上の声をどのように生かして支持につなげていけばよいか。みんなの党における取り組み事例をルグラン泉社長が解説した。

 昨年末の総選挙の際、同党のマニフェストである「アジェンダ」の表紙には、「増税凍結」「デフレ脱却」「経済復活」「原発ゼロ」「地域主権型道州制」の5つの政策キーワードを渡辺喜美代表の顔写真の真横に挙げていた。

 これははたして有権者に響くのか。そこで同党では、ブログやTwitter、検索キーワード、ニュースサイトなどで主要政策課題が出現する回数を調査し、参院選のアジェンダでは「両立できる原発ゼロと経済成長」「みんなで解決する子育て・介護」を2本柱として大きく扱った。泉社長は、「ソーシャルメディア上で話題にする政策課題の年代・性別による特徴を分析し、例えばTwitterでは若者が関心を持つテーマを発信していくといったコミュニケーション戦略を立てた」とネット選挙の舞台裏を明かした。

 泉氏はネット選挙を振り返って、「解禁直後ということもあって、企業に例えればセール直前になってサイトを立ち上げて『買って買って』と連呼するようなお粗末な面もあった。真価が問われるのは次の国政選挙。ここでパッタリ更新が止まるのか、地道に更新を続けてそれを資産にできるかで差がつく。これは企業も同様」とまとめてディスカッションを締めくくった。